火星衛星探査機MMXを載せたH3ロケット10号機は、2026年10月20日(火)4時41分03秒に種子島宇宙センターから上がりました。JAXAは同日付のプレスリリース「H3ロケット10号機による火星衛星探査機(MMX)の打上げ結果」で、打ち上げから約1時間11分13秒後にMMXを正常に分離し、軌道に投入したことを確認したと公表しています。
この日時は、JAXAが8月20日に最初に発表した「10月20日 4時41分03秒」と秒まで同じです。当サイトは10月18日の時点で、H3の9便はどれも最初に発表した日に上がっていないと書きました。10号機はその最初の例外で、10便中1便になります。本稿は、結果リリースの中身を計画書の数字と並べ、当サイトの実績表にこの1件を足したものです。
10月20日4時41分03秒、8月20日に発表した秒のまま上がった
JAXAの結果リリース(2026年10月20日)の本文はこうです。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、種子島宇宙センターから2026年10月20日4時41分03秒(日本標準時、24時間表記)に、H3ロケット10号機による火星衛星探査機(MMX)の打上げを行いました。ロケットは計画どおり飛行し、打上げから約1時間11分13秒後にMMXを正常に分離し、軌道に投入したことを確認いたしました。 (JAXA プレスリリース「H3ロケット10号機による火星衛星探査機(MMX)の打上げ結果」2026年10月20日)
リリースの語は「計画どおり飛行」「正常に分離」「軌道に投入」です。「成功」という語はこのリリースには無く、本稿の見出しもこの語に揃えています。
8月20日の最初の発表「H3ロケット10号機による火星衛星探査機(MMX)の打上げ」は、打上げ予定日を2026年10月20日(火)、予定時刻を4時41分03秒、予備期間を10月21日から11月7日としていました。10月18日の「打上げ時刻」の発表は日時をそのまま維持し、予備期間の末日だけを11月9日に延ばしています。この予備期間の変更は、ここでは1行にとどめます。結果として、8月20日の予定日時と10月20日の実施日時は、日付も時刻も秒まで一致しました。
JAXA側の反映状況を10月21日5時台に見た範囲で書いておきます。
- JAXAプレスリリース一覧2026の10月分は、10月1日・10月6日・10月14日・10月18日・10月20日の5件。10月21日付の項目は無く、MMXの探査機状態に関する続報もまだ無い
- ファン!ファン!JAXA!の特設サイトは、What's NEWの先頭が「プレスリリース『H3ロケット10号機による火星衛星探査機(MMX)の打上げ結果』を公開しました。(2026年10月20日)」。見出し部は「2026.10.20 LIFT OFF! 打上げ予定時刻 午前4時41分03秒」のまま
- 宇宙科学研究所のトップは、トピックス先頭2件が10月20日付の「打上げ結果(JAXAプレスリリース)」と「打上げ経過記者会見(10月20日 8時00分〜 配信)」
- MMX公式サイトのトップは「LAUNCH [打上げ予定] 2026.10.20」の表示のままで、NEWSに10月付の項目は無い
- 三菱重工のニュース一覧には、10月20日付でH3・MMXに関する発表は無い
分離は計画の1時間11分12秒に対し「約1時間11分13秒」
8月20日の打上げ計画書の表2(飛行計画)の最終行は、MMXの分離を打ち上げ後1時間11分12秒(4,272秒)、高度592km、慣性速度11.2km/sとしています。結果リリースは「約1時間11分13秒後」です。
| 項目 | 計画(計画書 表2) | 結果(結果リリース) |
|---|---|---|
| 打ち上げ時刻 | 2026-10-20 04:41:03 JST | 2026-10-20 04:41:03 JST |
| MMX分離 | 打ち上げ後1時間11分12秒(4,272秒) | 打ち上げ後 約1時間11分13秒 |
| 分離時の高度 | 592km | 記載なし |
| 分離時の慣性速度 | 11.2km/s | 記載なし |
分離時刻の差は1秒ですが、結果側には「約」が付いています。この1秒を「遅れ」とは読みません。リリース自身が「計画どおり飛行」と書いており、計画書の値も秒単位の丸めです。高度と速度は結果リリースに書かれていないので、計画どおりだったかどうかは本稿では言えません。
最初の発表日に上がったH3は10便中1便になった
10月18日の記事の表に10号機の行を足します。号機の順で並べ、6号機は8号機より後に飛んでいます。
| 号機 | 追跡できた最初の発表日 | 実際に上がった日 | 最初の発表日どおりか |
|---|---|---|---|
| 試験機1号機 | 2023-02-12 | 2023-03-07 | 動いた |
| 試験機2号機 | 2024-02-15 | 2024-02-17 | 動いた |
| 3号機 | 2024-06-30 | 2024-07-01 | 動いた |
| 4号機 | 2024-10-20 | 2024-11-04 | 動いた |
| 5号機 | 2025-02-01 | 2025-02-02 | 動いた |
| 6号機 | 2026-06-10 | 2026-06-12 | 動いた |
| 7号機 | 2025-10-21 | 2025-10-26 | 動いた |
| 8号機 | 2025-12-07 | 2025-12-22 | 動いた |
| 9号機 | 2026-02-01 | 2026-08-11 | 動いた |
| 10号機 | 2026-10-20 | 2026-10-20 | そのまま |
母数はH3の10便(試験機1号機から10号機、2023年3月〜2026年10月)です。最初に発表した日に上がった便は、9便で0だったものが10便で1になりました。10号機は時刻も秒まで動いていません。
ここで混同しないでほしい指標が1つあります。10月19日の記事で書いた「前々日の発表で予備期間が動いたのはH3の10便で初めて」は、予備期間の末日の話です。本稿の「最初の発表日に上がったのは10便で初めて」は、打ち上げ日そのものの話です。10号機は、予備期間の末日は11月7日から11月9日へ動き、打ち上げ日は動いていません。別の2つの指標がどちらも「10便で初」になった便ということになります。
10月18日の記事は、H3で天候が理由の延期は前々日の14〜15時台にJAXAのプレスリリースで出るのが通例だと書きました。10号機では前々日の10月18日14時に出たのは「打上げ時刻」の発表で、延期ではありませんでした。延期の発表は、最初の発表から打ち上げまで1件もありません。
H3は10回中成功8、8号機の失敗から3機連続
当サイトのスナップショットでH3は9回・成功7・失敗2(2023年3月7日〜2026年8月11日、日本時間)でした。10号機を加算します。
| 区分 | スナップショット(9月4日) | 加算後(10月20日) | 期間(日本時間) |
|---|---|---|---|
| H3 全体 | 9回・成功7・失敗2 | 10回・成功8・失敗2 | 2023-03-07〜2026-10-20 |
| H3-22(ブースタ2本) | 7回・成功5・失敗2 | 7回・成功5・失敗2(変化なし) | 2023-03-07〜2026-08-11 |
| H3-24(ブースタ4本・MMXの形態) | 1回・成功1 | 2回・成功2 | 2025-10-26〜2026-10-20 |
| H3-30(ブースタ0本) | 1回・成功1 | 1回・成功1(変化なし) | 2026-06-12 |
失敗2件は、当サイトの失敗一覧にある2023年3月7日の試験機1号機(だいち3号)と2025年12月22日の8号機(みちびき5号機)です。8号機のあとに上がったH3は、6号機(2026年6月12日・H3-30)、9号機(2026年8月11日・H3-22)、10号機(2026年10月20日・H3-24)の3便で、3便とも成功側に入ります。8号機の失敗から3機連続、と数えられます。8号機の失敗原因と9号機での対策は9月23日の記事に書きました。
時事通信は10月20日の記事で、記者会見でのH3プロジェクトマネージャ有田誠氏の発言として「歴史的なMMXの第1幕をH3で開けることができて、大変うれしい」を引き、「H3は3機連続の成功で、成功率は80%となった」と書いています。3機連続は当サイトの加算と一致します。80%は10回中8なら同じ値になりますが、時事側の母数の定義は記事に書かれていないので、当サイトの数字としては率にせず「10回中8」で出します。
10月13日の記事で、H3は10号機まで1,323日でH-IIAより516日短い、失敗はH3の2件に対しH-IIAは1件、と書きました。10号機が上がった今、「10号機まで」の両方の数字が確定した形です。10号機までのH-IIAは10便中9成功、H3は10便中8成功で、失敗の件数の差は変わっていません。
種子島100回目が確定、2026年の国内打ち上げは4回目
9月25日の記事で、当サイト集計では種子島99回・成功94・失敗5(1975年9月9日〜2026年8月11日)で、MMXが上がれば種子島100回目になると書きました。上がったので、当サイト集計では種子島100回・成功95・失敗5になります。
| 区分 | スナップショット(9月4日) | 加算後(10月20日) |
|---|---|---|
| 種子島宇宙センター | 99回・成功94・失敗5(1975-09-09〜2026-08-11) | 100回・成功95・失敗5 |
| 2026年(日本時間の暦年) | 3回・成功2・失敗1(2026-03-05〜2026-08-11) | 4回・成功3・失敗1 |
| 国内4射場 全体(弾道飛行のMOMOを含む) | 152回 | 153回 |
| 国内4射場 軌道投入をめざした便 | 145回 | 146回 |
9月25日の記事と同じ但し書きを再掲します。JAXAの発表に「100回目」という表現はありません。この数字はLL2に登録された打ち上げを母数にした当サイトの集計で、JAXAの数え方と一致しない可能性があります。結果リリースにも、本日見た特設サイト・宇宙科学研究所トップにも、回数の節目に触れる記述は無いです。
2026年の国内打ち上げは、当サイトの暦年集計で3月5日のカイロス3号機(失敗)、6月12日のH3 6号機、8月11日のH3 9号機に本件が加わって4回目です。去年2025年の1年間は4回でしたから、10月の時点で去年と同じ回数に達しました。この先の2026年の予定は、当サイトの予定表では精度が「年」のものしかなく、年内に5回目があるかどうかは本稿では言えません。
言えないこと・次に見るもの
書けないことを並べます。
- 探査機の状態。 時事通信は、川勝康弘教授が会見で「探査機が安定した状態にあると確認した」と述べたと書いています。これは会見での発言の報道で、JAXAの文書にはまだ無く、当サイトは会見の動画も見ていません。太陽電池パドルの展開や通信の確立については、JAXAまたはMMX公式サイトの続報を待ちます
- 投入された軌道の名前。 結果リリースの語は「軌道に投入」です。火星へ向かう軌道に入ったはずですが、どの軌道かをリリースは書いていないので、本稿もJAXAの語のまま書きます
- LL2上の登録。 この便がLL2で Success と登録されているかは未確認です。本稿の実績表はすべて当サイトの加算で、次のスナップショット更新で突き合わせます
- 三菱重工の発表。 10月21日5時台の時点で、三菱重工のニュース一覧にH3 10号機の発表は無いです。無い理由は書けません
- 「当初の計画から何年遅れたか」。 報道にはこの種の記述がありますが、当初計画を示すJAXAの一次資料を本稿では開いていないので書きません
次に見るものは3つです。JAXAプレス一覧・MMX公式サイト・宇宙科学研究所トップに探査機の状態の続報が出るか。三菱重工がH3 10号機の発表を出すか。そして当サイト側では、10月18日の記事が約束した表への10号機の行の追記と、9月5日の予測記事への結果の記録です。本稿の納品は新規1本なので、両記事への追記は別の日に updated の日付つきで行います。