2026年10月20日4時41分03秒に種子島宇宙センターから上がったH3ロケット10号機(火星衛星探査機MMX)は、H3にとって10機目の便でした。JAXAは同日、打ち上げから約1時間11分13秒後にMMXを正常に分離し、軌道に投入したと発表しています。この記事では、前の主力機H-IIAが1号機から10号機に達するまでにかかった日数と、同じ区間のH3を並べます。日付はすべて三菱重工とJAXAの実績ページから取り、日数は当サイトが日付だけで数えました。
結論を先に書きます。H-IIAは1号機(2001年8月29日)から10号機(2006年9月11日)まで1,839日。H3は試験機1号機(2023年3月7日)から10号機(2026年10月20日)まで1,323日で、H-IIAより516日短い。10号機までの失敗はH-IIAが1件、H3が2件です。失敗から次の便までの空白はH-IIAが455日、H3が347日と172日でした。
ヒーロー写真は2014年2月27日、全球降水観測計画GPMの打ち上げ前日に射点へ運ばれるH-IIAです。本稿で比べる2006年の10号機でも、H3でもありません。
10号機までの日数: H3は1,323日、H-IIAは1,839日
まずH-IIAの1号機から10号機までを並べます。搭載物は出典に記載があるものだけ書きました。1号機から5号機はJAXA「過去のプロジェクト」の表記、7号機から10号機は三菱重工のページの表記です。
| 号機 | 打ち上げ日(日本時間) | 結果 | 搭載物(出典の表記) |
|---|---|---|---|
| 試験機1号機 | 2001-08-29 | 成功 | LRE、VEP-2 |
| 試験機2号機 | 2002-02-04 | 成功 | つばさ、VEP-3、DASH |
| 3号機 | 2002-09-10 | 成功 | こだま、USERS |
| 4号機 | 2002-12-14 | 成功 | みどりII、マイクロラブサット1号機(※) |
| 5号機 | 2003-03-28 | 成功 | 情報収集衛星 |
| 6号機 | 2003-11-29 | 失敗 | Launch Library 2 の表記は「IGS Radar (2) & IGS Optical (2)」 |
| 7号機 | 2005-02-26 | 成功 | ひまわり6号(MTSAT-1R) |
| 8号機 | 2006-01-24 | 成功 | だいち |
| 9号機 | 2006-02-18 | 成功 | ひまわり7号 |
| 10号機 | 2006-09-11 | 成功 | 三菱重工の表記は「政府関連ミッション」 |
※ 4号機の搭載物は、JAXA「過去のプロジェクト」の表記が2件なのに対し、三菱重工のページでは「みどりII、マイクロラブサット1号機、WEOS、Fed Sat」の4件です。表にはJAXAの表記を載せました。
次にH3です。H3は号機の番号と飛んだ順が一致しません。6号機は8号機より後に飛んでいます。
| 号機 | 打ち上げ日(日本時間) | 結果 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 試験機1号機 | 2023-03-07 | 失敗 | だいち3号 |
| 試験機2号機 | 2024-02-17 | 成功 | |
| 3号機 | 2024-07-01 | 成功 | |
| 4号機 | 2024-11-04 | 成功 | |
| 5号機 | 2025-02-02 | 成功 | |
| 7号機 | 2025-10-26 | 成功 | HTV-X1。24形態の初便 |
| 8号機 | 2025-12-22 | 失敗 | みちびき5号機 |
| 6号機 | 2026-06-12 | 成功 | VEP-5・小型副衛星6基。30形態の初便 |
| 9号機 | 2026-08-11 | 成功 | みちびき7号機 |
| 10号機 | 2026-10-20 | 成功 | MMX。24形態の2回目 |
日数を数えると、こうなります。
| 区間 | 日数 | 内訳(当サイト計算) |
|---|---|---|
| H-IIA 1号機(2001-08-29)→ 10号機(2006-09-11) | 1,839日 | 5年分 1,826日(うるう日1日を含む)+13日 |
| H3 試験機1号機(2023-03-07)→ 10号機(2026-10-20) | 1,323日 | 3年分 1,096日(うるう日1日を含む)+227日 |
| 差 | 516日 | 1,839−1,323 |
1,323日という数字そのものは9月23日の記事の末尾で1文だけ触れています。本稿はその比較相手を置く記事です。なお当サイトの集計では、H-IIAは4つの形態(202・2022・2024・204)の合算で50回、H3は3つの形態(22・24・30)の合算で9回です。三菱重工のページに載る号機(H-IIA 1号機から50号機、H3の9便)を当サイトが数えた数と一致します。三菱重工のページに合計数の文言はありません。
失敗は2件と1件、失敗から次の便までは172日・347日と455日
10号機までの失敗は、H-IIAが6号機の1件、H3が試験機1号機と8号機の2件です。それぞれの失敗から、同じ機体の次の便が上がるまでの日数を並べます。
| 機体 | 失敗した便 | 次の便 | 日数 | 内訳(当サイト計算) |
|---|---|---|---|---|
| H-IIA | 6号機(2003-11-29) | 7号機(2005-02-26) | 455日 | 1年分 366日(うるう日を含む)+89日 |
| H3 | 試験機1号機(2023-03-07) | 試験機2号機(2024-02-17) | 347日 | 9月23日の記事に既出 |
| H3 | 8号機(2025-12-22) | 6号機(2026-06-12) | 172日 | 9月23日の記事に既出 |
H3の2つの空白を足すと519日で、H-IIAの1つの空白455日より64日長い。つまり、全体の差516日は「失敗からの立ち直りが早かった」ことでは説明できません。失敗の空白を除いた残りの区間を比べると、H-IIAは1,839−455=1,384日を8区間で、H3は1,323−519=804日を7区間で進んでいます。差は失敗と無関係な便と便のあいだの間隔にあります。これは日付から出る算術の結果で、その間隔が短い理由(機体の製造数、射場の運用、予算など)は本稿では資料に当たっていません。
失敗の中身も違います。H-IIA 6号機について Launch Library 2 は "One of the SRBs failed to separate from the 1st stage." と記録しています。当サイト訳で「固体ロケットブースタの1本が第1段から分離しなかった」。H3の2件は、試験機1号機が第2段エンジンの不点火、8号機が衛星搭載アダプタの接着剥離で、どちらも9月23日の記事に書きました。壊れた場所が3件とも違うので、失敗の件数だけで2つの機体の信頼性を比べることはできません。
2004年は国内の打ち上げが0回だった。暦年で見た2つの機体の最初の4年
当サイトの年別集計には、2004年の行がありません。2003年の3回の次は2005年の2回で、国内4射場からの打ち上げは弾道飛行を含めて0回でした。H-IIAの失敗(2003年11月29日)の翌年です。H3の失敗(2023年3月7日と2025年12月22日)の翌年にあたる2024年と2026年は、それぞれ7回と3回(2026年は9月5日時点)で、行が消えた年はありません。
暦年で並べます。「全機体」の列は弾道飛行を含む国内4射場の合計で、「うちH-IIA」「うちH3」の列は三菱重工・JAXAの実績ページの号機ごとの日付から当サイトが数えました。
| 暦年 | 全機体(成功・失敗) | うちH-IIA | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2001年 | 1回(1・0) | 1回 | 試験機1号機 |
| 2002年 | 3回(3・0) | 3回 | 試験機2号機・3号機・4号機 |
| 2003年 | 3回(2・1) | 2回 | 5号機・6号機(失敗)。残る1回はH-IIA以外 |
| 2004年 | 行なし(0回) | 0回 | |
| 2005年 | 2回(2・0) | 1回 | 7号機。残る1回はH-IIA以外 |
| 2006年 | 6回(6・0) | 4回 | 8号機・9号機・10号機・11号機 |
| 暦年 | 全機体(成功・失敗) | うちH3 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 2023年 | 3回(2・1) | 1回 | 試験機1号機(失敗) |
| 2024年 | 7回(5・2) | 3回 | 試験機2号機・3号機・4号機。失敗2件はカイロスでH3ではない |
| 2025年 | 4回(3・1) | 3回 | 5号機・7号機・8号機(失敗) |
| 2026年 | 3回(2・1)※9月5日時点。10号機を加えて4回(3・1) | 3回 | 6号機・9号機・10号機。失敗1件はカイロス3号機 |
H3は2024年から3年続けて暦年3回になりました(2026年は10号機を含む)。H-IIAが暦年で3回以上になったのは、10号機までの区間では2002年と2006年の2回でした(2006年は11号機を除いても8・9・10号機の3回)。
2004年が0回だった理由は、今回の資料のどこにも書かれていません。当サイトの集計は「登録された打ち上げが無かった」という事実だけを示しています。H-IIAだけでなく、他の機体の便も無かったという意味ですが、本稿ではその背景には踏み込みません。
2006年9月11日のH-IIA 10号機から7,344日。あのときの2006年は6回の年だった
H-IIAの10号機からH3の10号機までは7,344日です。2006年9月11日から2026年9月11日までが20年分でうるう日5日を含む7,305日、そこから10月20日までが39日。20年1か月9日にあたります。
2006年は当サイトの集計で国内の打ち上げが6回あった年です。H-IIAの8・9・10・11号機の4回に、JAXAの実績ページに載るM-V 8号機(あかり、2006年2月22日)とM-V 7号機(ひので、2006年9月23日)の2回を足して6回。年に6回以上は、当サイトの集計では2006年のほかに2017年(8回)、2018年と2024年(各7回)しかありません(弾道飛行を含む母数)。
H-IIA 10号機の12日後に上がったM-V 7号機は、当サイトの集計でM-Vの最後の便です。同じ年の12月18日にはH-IIA 11号機が204形態の初便として上がりました。この便は技術試験衛星VIII型「きく8号」を載せた便です(三菱重工・JAXAの実績ページ)。
この比較で言えないこと
- 速さの理由は書けません。 516日の差がどこから来たかは、便と便の間隔の算術までは言えますが、その間隔を決めた製造・運用・予算の事情には資料に当たっていません
- 成功率は出しません。 H-IIAは10便中9件、H3は10便中8件が成功で、どちらも母数が10件です。率にすると1件の差が10ポイント動きます
- 信頼性の比較ではありません。 3件の失敗は壊れた場所が全部違います
- 10号機は予定どおり10月20日に上がりました。 本稿の初版(10月13日)は予定日で数えましたが、実際の打ち上げ日も同じなので1,323日は変わりません。10号機を成功に数えたのは、JAXAの発表の語(「計画どおり飛行」「正常に分離し、軌道に投入」)による当サイトの判断です
- H-IIA 10号機の日付は、三菱重工のページの記載に帰属しています。 10号機の行はJAXAの打上げ実績ページでは表示されていないため、JAXAのページは10号機の出典に使っていません。7号機(2005年2月26日・ひまわり6号)は三菱重工・JAXAの両ページに載っています
- 2004年の0回は、Launch Library 2 の登録が無いという意味です。 別の資料で裏を取ってはいません
集計の境界(LL2登録・弾道含む・日本時間の暦年)は9月5日の記事に書いたとおりです。10号機は10月20日に上がり、本稿の「予定」はすべて実績になりました(2026年10月23日更新)。