2026年10月20日4時41分03秒に種子島宇宙センターから上がる予定のH3ロケット10号機は、機体形態が「H3-24L」です。JAXAのミッション概要ページは、この「L」=ロングフェアリングについて「ロングフェアリングは初めての適用となります」と明記しています。当サイトはこれまで、ロングフェアリングが10号機で初めてかどうかを一次資料で確認できておらず、書きませんでした。今回、JAXAのページの逐語で確定できたので書きます。
この記事では、10号機(ロング型)と、2026年8月11日に飛んだ9号機(ショート型)の打上げ計画書を並べて、フェアリングの寸法・質量・分離時刻がどれだけ違うかを読みます。ヒーロー写真は2025年2月の5号機で、JAXAの5号機ミッション概要ページによれば機体形態は「H3-22S」、つまりショート型です。10号機の先端は、この写真の機体より約6m長くなります。
10号機は「H3-24L」。ロングフェアリングは初適用、24形態は7号機に続く2回目
JAXAのミッション概要ページは、10号機の機体形態をこう説明しています。
ロングフェアリングは初めての適用となります
24形態は新型宇宙ステーション補給機1号機(HTV-X1)を打ち上げたH3ロケット7号機に続く二度目の飛行
同じページの機体の欄は、フェアリング「ロング(L)」、LE-9「2式」、SRB-3「4本」です。10号機の打上げ計画書も1.4節で「H3ロケット(H3-24L)」に注記を付け、「LE-9 エンジン2基、固体ロケットブースタ(SRB-3)4本、ロングフェアリングの機体形態」と書いています。「24」の2はLE-9の基数、4はSRB-3の本数、「L」がフェアリングの種別です。
つまり10号機には、飛んだ実績で見て2つの「初めて」に近い要素があります。ブースタ4本の24形態は7号機(2025年10月26日)に続く2回目で、ロングフェアリングは0回目、今回が初めてです。JAXA宇宙輸送技術部門のH3の機体ページは、フェアリングを「ショート(S)/ロング(L)」の2種で示し、全長を「63m(ロングフェアリングの場合)、57m(ショートフェアリングの場合)」としています。
計画書2冊を並べる。ロング型とショート型の寸法・質量
10号機の打上げ計画書(2026年8月20日)と9号機の打上げ計画書(2026年6月15日)の表を、同じ項目で並べます。差の列は当サイトの引き算です。
| 項目 | 10号機(H3-24L) | 9号機(H3-22S) | 差 |
|---|---|---|---|
| 衛星フェアリング 全長 | 約16.4m(ロング) | 約10.4m(ショート) | 6.0m |
| 衛星フェアリング 外径 | 約5.2m | 約5.2m | 0 |
| 衛星フェアリング 質量 | 約2.7t | 約1.8t | 0.9t |
| 機体全長 | 約63m | 約57m | 6m |
| 全備質量(人工衛星の質量は含まず) | 約575t | 約422t | 153t |
| SRB-3 質量 | 約304.8t(4本分) | 約152.4t(2本分) | 152.4t |
フェアリングの太さは同じで、長さだけが6.0m違います。機体全長の差6mは、フェアリングの差6.0mとほぼそのまま対応しています(宇宙輸送技術部門ページの63m/57mとも一致)。フェアリングの質量は0.9t重くなります。
なお、MMXプレスキット(9月18日版)40ページは「H3-24Lの全長は63m、重量(ペイロードを除く)は574トン」としており、計画書の「約575」と1t違います。この差の理由はどちらの資料にも無く、当サイトは前にも書いたとおり両方を併記するだけにします。
飛行シーケンスの差。ブースタ分離が2回、フェアリング分離は27秒早い
2冊の計画書の飛行シーケンスから、打ち上げ後3分台までのイベントを並べます。
| イベント | 10号機(H3-24L) | 9号機(H3-22S) |
|---|---|---|
| SRB-3 分離 | 1分56秒(第1ペア)、1分58秒(第2ペア) | 1分56秒(1回) |
| 衛星フェアリング分離 | 3分17秒(197秒)、高度131km、速度3.3km/s | 3分44秒(224秒)、高度123km、速度3.2km/s |
| フェアリング落下予想区域に外接する長方形 | 短辺107km・長辺330km(図9) | 短辺118km・長辺425km(図8) |
ブースタが4本の10号機は、2本ずつ2回に分けて切り離します。9号機は2本を1回で切り離しました。
フェアリング分離は、10号機が3分17秒、9号機が3分44秒で、10号機の方が27秒早い(224秒−197秒)。そのときの高度は10号機が131km、9号機が123kmで、10号機の方が8km高く、速度も0.1km/s速い数字になっています。計画書はこの差の理由を書いていません。当サイトも理由は書きません。数字の差だけです。
フェアリングが落ちてくる海域について、計画書は落下予想区域を図で示し、その区域に外接する長方形の寸法を書いています。10号機は107km×330km、9号機は118km×425kmで、10号機の方が短辺で11km、長辺で95km小さい長方形です。区域そのものの形は図でしか示されておらず、面積は計画書に無いので、ここでは長方形の寸法だけを引きます。
全備質量153tの差は、ほぼブースタ2本分。フェアリングの差は0.9t
全備質量は10号機が約575t、9号機が約422tで、差は153tです。この153tがどこから来るのかを、同じ表にある数字で分解します。
| 内訳 | 10号機 | 9号機 | 差 |
|---|---|---|---|
| SRB-3 | 約304.8t(4本) | 約152.4t(2本) | 152.4t |
| 衛星フェアリング | 約2.7t | 約1.8t | 0.9t |
| 小計 | 153.3t | ||
| 全備質量の差 | 約575t | 約422t | 153t |
SRB-3の差152.4tとフェアリングの差0.9tを足すと153.3tで、全備質量の差153tとほぼ一致します。0.3tの食い違いは、計画書の数字がすべて「約」付きであることの範囲内で、当サイトはこれ以上分解しません。第1段・第2段など他の項目の質量は今回の2冊で突き合わせていません。
読み方としては、「24」と「22」の差、つまりブースタ2本分が153tのほぼ全部で、「L」と「S」の差は1t未満です。10号機が9号機より153t重いのはロングフェアリングのせいではなく、ブースタが4本だからだ、という整理になります。これは2冊の計画書の表を引き算しただけの当サイトの計算で、どちらの計画書にも書かれていません。
飛んだ9機のフェアリング内訳と、書けないこと
当サイトの集計(LL2、2026年9月4日時点)で、H3は9機が飛んでいます。名前の内訳は「H3-22」7機(成功5・失敗2)、「H3-24」1機(成功1)、「H3-30」1機(成功1)で、合計9機はH3ファミリーの9機(成功7・失敗2)と一致します。期間は2023年3月7日〜2026年8月11日(日本時間)です。
LL2はフェアリングの文字を持たないので、JAXAの各号機ミッション概要ページで種別を1機ずつ確かめました。
| 号機 | 機体形態 | フェアリング | 根拠(JAXAミッション概要ページ) |
|---|---|---|---|
| 試験機1号機〜4号機 | H3-22S | ショート | 5号機ページ「機体形態はこれまでの1~4号機と同じ「H3-22S」です。」、4号機ページ「ショート(S)」 |
| 5号機 | H3-22S | ショート | 5号機ページ |
| 6号機(30形態試験機) | H3-30 | 記載なし | 6号機ページはS/Lを書いていない |
| 7号機 | H3-24W | ワイド | 7号機ページ「『H3-24W』形態の初めての打上げ」「ワイドフェアリングを新しく開発」 |
| 8号機 | H3-22S | ショート | 8号機ページ「ショート(S)」 |
| 9号機 | H3-22S | ショート | 9号機ページ「機体形態は1~5号機と同じ「H3-22S」です。」 |
飛んだ9機のうち、ショート型が7機、ワイド型が1機、種別の一次記載が取れないものが1機(6号機)、ロング型は0機です。ショート型7機という数は、LL2の「H3-22」7機と一致します。試験機1〜3号機については各機の計画書を開いておらず、5号機ページの「これまでの1~4号機と同じ」という記載による間接確定です。
7号機のワイド型について、7号機のミッション概要ページは「フェアリングの大きさをHTV-X仕様としただけでなく、与圧部へのレイトアクセスのための大型ドアを設けました」と書いています。一方、MMXプレスキット40ページは「H3には2種類のフェアリングがあり」と書いています。ワイド型を含めれば3種類になりますが、プレスキットが何を数えて「2種類」としているかは資料に説明が無いので、当サイトは「標準はS/Lの2種、HTV-X用にワイドが別にある」という両方の記載をそのまま並べるにとどめます。
打ち上げは2026年10月20日(火)4時41分03秒、予備期間は10月21日〜11月7日です(JAXA 8月20日プレスリリース)。今日9月28日から22日後になります。中継で見るなら、打ち上げ1分56秒後と1分58秒後にブースタが2回に分かれて離れ、3分17秒後に先端のフェアリングが開く。ここまでが、9号機までのH3と10号機の見え方が違う区間です。ロングフェアリングが飛ぶのはこれが初めてなので、その3分17秒後の一瞬が、H3の新しい形態がひとつ実績を持つかどうかの場面になります。