くわしく ニュース MMX H3 相模原 種子島 管制室

MMXの管制室は2023年10月竣工、打ち上げは当サイト集計で種子島100回目

(2026年10月23日(金) 更新) ・打ち上げ日和 編集部 ・約9分で読めます

JAXAは9月24日、相模原の管制室を報道に公開した。管制室は2023年10月竣工でMMXが最初のユーザ、打ち上げ後約5年を美笹・臼田を主局に運用する。当サイト集計では10月20日に上がった便が種子島100回目。

宇宙・ロケット産業を追っている人むけ。数字と一次情報で書いています。

種子島宇宙センター吉信第2射点。射点の構造物と2本の避雷塔が海を背に立っている
種子島宇宙センター 吉信第2射点(LP-2)。H3ロケットはここから上がる(2005年撮影)Naritama (NARITA Masahiro) / CC BY-SA 3.0 / 出典

2026年9月24日13時、JAXAは「火星衛星探査計画(MMX)に関する記者説明会」を開き、相模原キャンパスの管制室を報道に公開しました。火星衛星探査機MMXを載せたH3ロケット10号機は、その26日後の10月20日(火)4時41分03秒に種子島宇宙センターから上がり、JAXAは打ち上げから約1時間11分13秒後にMMXを正常に分離したと発表しています。

当サイトはこれまで、この便の観覧の抽選と、H3が予定どおりに上がるかを実績から追ってきました。今回はロケットが上がったあとを支える地上側の話です。管制室がいつできた部屋なのか、運用の訓練はどこまで進んでいるのか、そして当サイトの集計でこの便が種子島から何回目にあたるのかを、ISASの一次資料と自前の集計から整理します。

9月24日、JAXAは相模原の管制室を報道に公開した

ISASの「記者会見・説明会」一覧には、2026年9月24日の項目として「火星衛星探査計画(MMX)に関する記者説明会」が載っています。リンク先はYouTubeのライブ配信だけで、資料のPDFは付いていません。9月25日に見た時点では、JAXAのMMXプロジェクトページにも「2026年9月24日 13:00 記者会見等」として同じ項目があり、その直前の項目は8月20日14時のプレスリリース、つまり打ち上げ日を発表した回です。

説明会の登壇者は、当サイトが確認できたJAXAとISASのページには書かれていません。この記事では登壇者名を書きません。JAXAのプレスリリース一覧(2026年)にも9月24日13時の項目が「記者会見等」として載っていますが、リンク先はYouTube配信だけで資料は付いていません。9月のプレスリリースは、9月25日の朝に見た時点で9月2日の「いぶきGW」と9月14日の展示関係の2件でした(同日14時に宇宙飛行士の搭乗機決定の発表が加わっています)。管制室について確かなことを言うには、説明会そのものよりもISASニュースの連載のほうが材料になります。

管制室は2023年10月にできた部屋で、MMXが最初のユーザ

ISASニュース2026年6月号の連載第14回「MMX地上システムについて」は、管制室の来歴をこう書いています。

新たに管制室・運用室を確保するため、2023年10月に管制室・運用室・見学室の部屋竣工、新規整備を行い、MMXは最初のユーザとして什器や回線・計算機など各種設備整備を進めてきました

出典: ISAS 読むISAS 第14回(2026年6月29日掲載)

つまり、9月24日に公開された部屋は2023年10月に竣工した部屋で、MMXのために既存の管制室を空けたのではなく、新しく確保した部屋にMMXが最初に入った、という位置づけです。部屋は管制室・運用室・見学室の3つで、机や回線、計算機といった設備はMMXが最初のユーザとして整えてきました。

同じ回は、打ち上げ後の運用の長さと通信の経路も書いています。

2026年打上げ後、約5年間の探査機システムの管制運用を行う予定です。運用室は、計画立案やデータ解析など、オフライン運用や訓練を行う予定です

JAXAの深宇宙追跡地上局(美笹54m、臼田64m)を主局とし、海外機関地上局(NASA/JPL DSN及びESA ESTRACK)の深宇宙追跡ネットワークの支援を得て運用

出典: 同上

管制室と運用室の役割分担は、管制室が探査機との実際のやりとり、運用室が計画立案やデータ解析といったオフラインの作業と訓練、という切り分けです。通信の主局はJAXAの深宇宙追跡地上局2つで、口径54mの美笹局と口径64mの臼田局。それにNASA/JPLの深宇宙ネットワーク(DSN)とESAのESTRACKが支援に入ります。運用期間の「約5年」は、この連載の「2026年打上げ後、約5年間」という記述をそのまま引いたものです。

項目値出典
管制室・運用室・見学室の竣工2023年10月ISASニュース2026年6月号 第14回
MMXの位置づけ新しい部屋の最初のユーザ同
管制運用の期間2026年打ち上げ後、約5年間同
主局美笹54m・臼田64m(JAXA深宇宙追跡地上局)同
支援NASA/JPL DSN・ESA ESTRACK同

運用訓練は3段階、小規模を終えて2026年度に中規模へ

訓練の進み具合は、2か月前の連載第12回「MMX打上げに向けて運用準備進行中」(ISASニュース2026年4月号)にあります。逐語で引きます。

運用訓練は…小規模訓練から、運用体制を実運用規模にした中規模訓練、更に実運用と時間軸を合わせ、リアルタイム性をもたせた大規模訓練までの3段階で実施する計画

今までに打上げ初期クリティカル運用と、着陸運用のノミナル・オフノミナルなどの小規模訓練を実施

出典: ISAS 読むISAS 第12回(2026年4月28日掲載)

段階の名前はISASの語をそのまま使うと、小規模訓練・中規模訓練・大規模訓練の3つです。小規模は最小限の体制で運用の一部を模擬する訓練、中規模は運用体制を実運用の規模にした訓練、大規模はさらに実際の時間軸に合わせてリアルタイムで行う訓練です。4月号の時点で終わっていたのは小規模で、内容は打ち上げ直後のクリティカル運用と、着陸運用のノミナル(正常ケース)とオフノミナル(異常ケース)でした。

同じ回は「昨年度から運用訓練に着手」「2025年からはシミュレータにフライトバージョンのソフトウェアが実装」「2026年度に開始される中規模訓練に向けた課題の抽出」とも書いています。4月号の掲載は2026年4月28日なので「昨年度」は2025年度です。写真のキャプションは「運用訓練の様子。MMX用に新たに整備した運用室で行われている」で、第14回が言う新しい部屋で訓練が行われていることが分かります。

中規模訓練が実際に始まったかどうかは、この記事の材料では分かりません。 4月号にあるのは「2026年度に開始される」という計画までで、6月号の第14回にも開始の記述はありません。9月24日の説明会でその点に触れたかどうかも、資料が無いので確認できません。

この便は当サイト集計で種子島100回目

当サイトが射場別に数えている種子島宇宙センターからの打ち上げは、2026年9月4日時点の集計で99回です。内訳は成功94・失敗5で、最初の1回は1975年9月9日14時30分のN-Iロケット1号機、最後の1回は2026年8月11日4時23分のH3ロケット9号機(みちびき7号機)です。

集計のあとに種子島から打ち上げがあったかどうかを確かめました。当サイトが取得している打ち上げ予定表(9月25日4時17分取得)で次の種子島の便はMMXで、JAXAのプレスリリース一覧の9月の項目にもロケットの打ち上げはありません。10月23日にLL2の過去の打ち上げを見ても、8月11日のみちびき7号機の次に登録されている国内の便は10月20日のMMXで、状態は Success です。したがって10月20日のMMXは、当サイト集計で種子島から100回目の打ち上げになりました。

系列(LL2の分類)種子島からの回数期間(日本時間)
N-I7回(成功6・失敗1)1975年9月〜1982年9月
N-II(LL2では N-2)8回(成功8・失敗0)1981年2月〜1987年2月
H-I9回(成功9・失敗0)1986年8月〜1992年2月
H-II系(H-II・H-IIA・H-IIB)66回(成功64・失敗2)1994年2月〜2025年6月
H39回(成功7・失敗2)2023年3月〜2026年8月
合計99回(成功94・失敗5)1975年9月〜2026年8月

系列の表は当サイトの機体別集計から組んだもので、5系列の合計99回が射場別の種子島99回と一致します。失敗5回は、1979年2月6日のN-I(あやめ)、1999年11月15日のH-II(MTSAT)、2003年11月29日のH-IIA(情報収集衛星)、2023年3月7日のH3試験機1号機(だいち3号)、2025年12月22日のH3 8号機(みちびき5号機)です。

H3の実績は当サイトの集計で9回中 成功7・失敗2(2023年3月7日〜2026年8月11日、日本時間)、MMXが乗ったH3-24形態は1回中1成功(2025年10月26日)でした。10号機を当サイトが足すと、H3は10回(成功8・失敗2)、H3-24は2回(成功2)、種子島は100回(成功95・失敗5)です。打ち上げ結果の中身は10月21日の記事にまとめました。

書けないこと

管制室の人数や体制は書きません。 報道には職員の人数や24時間体制といった記述がありますが、当サイトが読んだISASの一次資料にはその数字が無いので、この記事では使いません。

説明会の中身は書けません。 9月24日の説明会はYouTube配信のみで、資料PDFは10月23日の時点でもISASにもJAXAにも載っていません(どちらの一覧もリンク先はYouTubeの配信だけです)。当サイトは配信を視聴していません。

100回目はJAXAの数え方と一致しない可能性があります。 上の注意のとおり、LL2の登録に基づく当サイトの数字です。

10月20日4時41分03秒に上がったこの便は、当サイト集計で種子島から100回目の打ち上げになり、ロケットの仕事は約1時間11分13秒後のMMX分離で終わりました。そのあとの約5年間を担うのが、2023年10月にできた相模原の部屋です。JAXAは翌10月21日、太陽電池パドルの展開や三軸姿勢の確立などを含む「初期クリティカル運用フェーズ」を終え、探査機の健全性を確認したと発表しました(どの部屋・どの地上局で運用したかは、発表文には書かれていません)。次に確かめるのは、JAXAとISASの発表に、搭載機器の初期機能確認の結果と往路巡行運用フェーズへの移行が出るかどうかです。