JAXAの公式サイトには「打上げ実績(2003年10月〜)」というページがあります。2026年10月20日現在の表は79行で、先頭は10月20日のH3ロケット10号機(火星衛星探査機MMX)です。当サイトが The Space Devs Launch Library 2(LL2)を母数に数えている国内4射場の打ち上げは、同じ2003年10月以降で85件です。同じ日本のロケットの話なのに、数字は一致しません。
9月25日の記事と10月21日の記事で当サイトは、「種子島100回目」という数字について「JAXAの数え方と一致しない可能性があります」と書きました。本稿はその宿題の答えです。結論を先に書くと、JAXAのページは「JAXAミッションに係る」打ち上げを海外の射場も含めて数え、当サイトは「国内4射場から上がった」打ち上げをJAXA以外の機体も含めて数えています。海外10行を除いたJAXAの国内分は69行で、当サイトの85件との差16件は1件ずつ名指しできました。
JAXA公式の「打上げ実績」は79行、うち国内69行。当サイトの同じ期間は85件
JAXAのページの範囲は「JAXAミッションに係る打上げ実績」です。ロケットが日本のものかどうか、射場が国内かどうかは条件になっていません。実際に、海外の射場から上がった行が10行あります。
| 打上げ日(JST) | 打上げロケット | ミッション/搭載衛星 | 打上げ場所 |
|---|---|---|---|
| 2025-12-14 | Electron | 小型実証衛星4号機(RAISE-4) | ニュージーランド マヒア半島 第1発射施設 |
| 2024-10-07 | ファルコン9 | 二重小惑星探査計画 Hera | ケープカナベラル宇宙軍施設 |
| 2024-05-29 | ファルコン9 | EarthCARE/CPR | ヴァンデンバーグ宇宙軍基地 |
| 2024-02-18 | Electron | 実証衛星 ADRAS-J | ニュージーランド マヒア半島 第1発射施設 |
| 2023-04-14 | アリアン5 | 木星氷衛星探査計画 JUICE | ギアナ宇宙センター |
| 2022-11-16 | Artemis I | 超小型探査機OMOTENASHI及びEQUULEUS | ケネディ宇宙センター |
| 2018-10-20 | アリアン5 | BepiColombo/水星磁気圏探査機「みお」 | ギアナ宇宙センター |
| 2009-07-16 | スペースシャトル | 「きぼう」船外実験プラットフォーム | ケネディ宇宙センター |
| 2008-06-01 | スペースシャトル | 「きぼう」船内実験室 | ケネディ宇宙センター |
| 2008-03-11 | スペースシャトル | 「きぼう」船内保管室 | ケネディ宇宙センター |
打上げ場所の内訳は、種子島宇宙センター60行、内之浦宇宙空間観測所9行、海外10行です。国内分は60+9=69行になります。
当サイトの範囲は逆です。国内4射場から上がった便は、JAXAの機体でなくても、人工衛星を軌道に乗せない弾道飛行でも数えます。海外の射場から上がった便は、JAXAの探査機を載せていても数えません。
| 数え方 | 件数 | 期間 | 範囲 |
|---|---|---|---|
| JAXA「打上げ実績」の全行 | 79 | 2003-11-29〜2026-10-20 | JAXAミッションに係る打ち上げ。海外射場を含む |
| 同・国内の行 | 69 | 同上 | 上から海外10行を除く |
| 当サイト(LL2)国内4射場・全体 | 85 | 2003-10-01〜2026-10-20 | 弾道飛行のMOMO 7件を含む |
| 当サイト(LL2)国内4射場・軌道投入便 | 78 | 同上 | 85からMOMO 7件を除く |
国内69行と当サイト85件の差は16件です。軌道投入便だけに絞っても78件で、まだ9件の差が残ります。次の節でその16件を1件ずつ並べます。
JAXAのページの種子島60行は、当サイトの機体別の数字からも組み立て直せます。H-IIAの6号機から50号機までは45便で、そこからJAXAのページに無い4便(後述)を引くと41。H-IIBは9便、H3は10便。41+9+10=60で、行数と一致します。内之浦9行は、イプシロン6便とM-Vの6・7・8号機の3便で9です。
国内分の差16件を1件ずつ
まず年別に、当サイトの件数とJAXAのページの国内の行数を並べます。差が出るのは8つの年だけで、ほかの年はすべて同じ数です。
| 年(日本時間) | 当サイト(LL2)国内 | JAXAページ国内の行 | 差 | 差の中身 |
|---|---|---|---|---|
| 2017 | 8 | 6 | 2 | MOMO 1・SS-520-4 |
| 2018 | 7 | 5 | 2 | MOMO 1・SS-520-5 |
| 2019 | 4 | 2 | 2 | MOMO 2 |
| 2020 | 5 | 4 | 1 | MOMO 1 |
| 2021 | 5 | 2 | 3 | MOMO 2・H-IIA(Inmarsat-6 F1) |
| 2023 | 3 | 2 | 1 | H-IIA(IGS Radar 7) |
| 2024 | 7 | 3 | 4 | カイロス2・H-IIA(IGS Optical 8・IGS Radar 8) |
| 2026 | 4 | 3 | 1 | カイロス1 |
| 合計 | 16 | MOMO 7・カイロス3・SS-520 2・H-IIA 4 |
JAXAページの「国内の行」は、その年の全行から海外の行を引いた数です。2018年はBepiColombo、2023年はJUICE、2024年はADRAS-J・EarthCARE・Heraの3行を引いています。
16件の中身は4つの機体に分かれます。
| 機体 | 件数 | 打上げ日(日本時間) | 射場 | LL2の結果 |
|---|---|---|---|---|
| MOMO(インターステラテクノロジズ・弾道飛行の観測ロケット) | 7 | 2017-07-30〜2021-07-31(2017年1・2018年1・2019年2・2020年1・2021年2) | 北海道スペースポート | 成功3・失敗4 |
| SS-520-4 | 1 | 2017-01-15 | 内之浦宇宙空間観測所 | 失敗 |
| SS-520-5 | 1 | 2018-02-03 | 内之浦宇宙空間観測所 | 成功 |
| カイロス初号機 | 1 | 2024-03-13 | スペースポート紀伊 | 失敗 |
| カイロス2号機 | 1 | 2024-12-18 | スペースポート紀伊 | 失敗 |
| カイロス3号機 | 1 | 2026-03-05 | スペースポート紀伊 | 失敗 |
| H-IIA 45号機(Inmarsat-6 F1) | 1 | 2021-12-23 | 種子島宇宙センター | 成功 |
| H-IIA(IGS Radar 7) | 1 | 2023-01-26 | 種子島宇宙センター | 成功 |
| H-IIA(IGS Optical 8) | 1 | 2024-01-12 | 種子島宇宙センター | 成功 |
| H-IIA(IGS Radar 8) | 1 | 2024-09-26 | 種子島宇宙センター | 成功 |
MOMOはインターステラテクノロジズ、カイロスはスペースワンの機体で、JAXAのページには行がありません。SS-520の2便は内之浦から上がった便ですが、JAXAのページの内之浦9行はイプシロンとM-Vだけです。H-IIAの4便はいずれも種子島から上がり、載せた衛星はInmarsat-6 F1と情報収集衛星3基でした。なぜこの4便が無いのかはページに書かれていません。MOMOの7便は10月17日の記事で扱った北海道スペースポートの全件と同じものです。
16件の内訳は、当サイトの機体別集計でも確かめられます。MOMOは7件(orbital: false)、S-Series(SS-520)は2件、カイロスは3件で、いずれも機体別の件数そのままです。H-IIAの4件は、2021年12月1日以降のLL2一覧20件のうちJAXAページに行が無い7件(上のH-IIA 4件+カイロス3件)から出しました。
失敗の数も変わる: JAXAの※4件、当サイトの12件、軌道投入便なら8件
JAXAのページには、失敗した便の行に「※」の注記が付いています。2003年11月29日のH-IIA 6号機は「※SRB-Aの1本の分離ができず、高度および速度が不足することから指令破壊しました」、2022年のイプシロン6号機・2023年のH3試験機1号機・2025年のH3 8号機は「※…打上げ失敗に関する対応状況について」です。この4行が、JAXAのページで「失敗」と読める行のすべてです(2024年2月18日のADRAS-Jの行にも※がありますが、衛星の開発者に関する注記で失敗ではありません)。
当サイトの失敗一覧で、2003年11月29日以降の国内4射場の失敗は12件です。
| 打上げ日(日本時間) | 便 | 射場 | JAXAページの※ | 当サイト・軌道投入便の失敗 | 当サイト・全体の失敗 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2003-11-29 | H-IIA 6号機(情報収集衛星) | 種子島 | あり | 入る | 入る |
| 2017-01-15 | SS-520-4(TRICOM-1) | 内之浦 | 行なし | 入る | 入る |
| 2017-07-30 | MOMO 初号機 | 北海道 | 行なし | 弾道飛行のため入らない | 入る |
| 2018-06-30 | MOMO 2号機 | 北海道 | 行なし | 同上 | 入る |
| 2019-07-27 | MOMO 4号機 | 北海道 | 行なし | 同上 | 入る |
| 2020-06-14 | MOMO 5号機 | 北海道 | 行なし | 同上 | 入る |
| 2022-10-12 | イプシロン6号機 | 内之浦 | あり | 入る | 入る |
| 2023-03-07 | H3試験機1号機(だいち3号) | 種子島 | あり | 入る | 入る |
| 2024-03-13 | カイロス初号機 | スペースポート紀伊 | 行なし | 入る | 入る |
| 2024-12-18 | カイロス2号機 | スペースポート紀伊 | 行なし | 入る | 入る |
| 2025-12-22 | H3 8号機(みちびき5号機) | 種子島 | あり | 入る | 入る |
| 2026-03-05 | カイロス3号機 | スペースポート紀伊 | 行なし | 入る | 入る |
| 合計 | 4 | 8 | 12 |
2003年11月29日から2026年10月20日までの期間で、失敗の件数はJAXAのページで4、当サイトの軌道投入便で8、当サイトの全体で12です。差の内訳は、カイロス3件とSS-520-4の1件がJAXAのページに行が無いこと(4件)、MOMOの失敗4件が弾道飛行であること(4件)です。母数も違うので、3つの数字から率を作って比べることはしません。
2023年以降の情報収集衛星とInmarsat-6 F1は載っていない
JAXAのページで「情報収集衛星」と書かれた行は13行あります。最も新しいのは2020年2月9日のH-IIA 41号機です。2003年11月29日の6号機から2020年2月9日の41号機まで、13行すべてが種子島宇宙センターの行です。
当サイトの母数にある2023年1月26日(IGS Radar 7)、2024年1月12日(IGS Optical 8)、2024年9月26日(IGS Radar 8)の3便は、JAXAのページに行がありません。この3便はいずれもH-IIAで種子島から上がった便です。2020年2月9日まではあって2023年以降は無い、という状態がページ上の事実で、その理由はページに書かれていません。本稿も理由を書きません。
商業衛星の扱いも1件ずつ違います。2015年11月24日のH-IIA 29号機(高度化仕様)は「通信放送衛星Telstar 12 VANTAGE」として行があります。2021年12月23日0時32分(日本時間)のH-IIA 45号機(Inmarsat-6 F1)は行がありません。どちらも海外の通信衛星を載せた便で、どこで線が引かれているかはページから読めません。「JAXAミッションに係る」の定義もページに無いので、本稿は「載っている」「載っていない」までを書きます。
「予定」のほうも重ならない: JAXA 12件と当サイト15件、共通は6件
JAXAには「打上げ予定」のページもあります。2026年10月23日に見た時点で「2026年6月12日現在」のままで、区分は「2026年度(令和8年度)以降」の1つだけです。ミッションは12件並び、打上げ日もロケット名も書かれていません。注記は次のとおりです。
本計画は、JAXAが目標としている打上げ計画であり、今後の資金事情やプロジェクトの開発状況等に応じて変更を行うことがあります。また、これらの内容は宇宙基本計画工程表にも掲載されています。 (JAXA「打上げ予定」・2026年6月12日現在・2026年10月23日確認)
当サイトの予定表は、2026年10月22日19時49分(UTC・日本時間10月23日4時49分)取得で15件です。両方に載っているのは6件です。
| 区分 | 件数 | ミッション |
|---|---|---|
| 両方にある | 6 | HTV-X2、HTV-X3、LUPEX、DESTINY+(当サイト側の表記は「DESTINY+ & RAMSES」)、SOLAR-C、ETS-9 |
| JAXA「打上げ予定」にだけある | 6 | HTV-X4、HTV-X5、PMM(降水レーダ衛星)、JASMINE、LiteBIRD、MMX |
| 当サイトの予定表にだけある | 9 | JV-LOTUSat-1(イプシロンS)、JSDF SDA衛星、IGS Optical Diversification 1、IGS Optical 9、IGS Optical Diversification 2、Mid-Inclination Rideshare、ZERO(初号機)、MBR Explorer、ispace Mission 3 ULTRA |
JAXAの12件に残っているMMXは、10月20日に打ち上げが終わった便です。「2026年6月12日現在」のページが10月23日時点で更新されていないという事実で、それ以上のことは本稿では言えません。当サイトにだけある9件のうち、情報収集衛星の3件は、実績のページでも2023年以降の便が載っていない系列です。残りの6件がJAXAの「打上げ予定」の範囲に入るかどうかは、ページに定義が無いので本稿では判定しません。
言えないこと・次に見るもの
書けないことを並べます。
- JAXAのページが2023年以降の情報収集衛星を載せない理由。 ページには注記が無く、本稿は照会もしていません
- 「JAXAミッションに係る」の定義。 Telstar 12 VANTAGEが載りInmarsat-6 F1が載らない線引きは、ページから読めません
- どちらの数え方が正しいか。 JAXAのページは範囲を自分で宣言しており、当サイトはLL2の登録を母数にしています。範囲が違うだけで、どちらかを「漏れ」とは書きません
- 当サイトの母数の完全性。 LL2に無い便(jtSPACE VP01)は入っていません。JAXAのページとの突き合わせは、年別の件数の比較と、2021年12月以降の20件についての行ごとの比較です。年別では、JAXAの国内の行数が当サイトの件数を上回る年はありませんでした。2021年11月以前の行ごとの比較はしていません
- 三菱重工「打上げ実績」との突き合わせ。 本稿では開いていません
10月21日の記事で書いた「種子島100回目」は、当サイトの母数(1975年9月9日のN-I以降・LL2登録・100件)での数字です。JAXAのページは2003年10月以降しか無く、種子島は60行です。JAXAの発表に「100回目」という表現が無いのは、この母数がJAXAのページに存在しないからでもあります。次に見るものは、JAXA「打上げ予定」ページが「2026年6月12日現在」から動くかどうかと、JAXA「打上げ実績」ページに次の行が増えたとき、当サイトのスナップショットと同じ日付になるかどうかです。