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JAXAとISCが再使用ロケットで共創開始、国内の打ち上げ152回に再使用機は0回

・打ち上げ日和 編集部 ・約13分で読めます

JAXAと将来宇宙輸送システム(ISC)は10月14日、J-SPARCで再使用ロケットの共創を9月に始めたと発表。ISCは文科省SBIRで10.0億円追加、JAXAのRV-Xは7月に約40秒の飛行で終了。国内152回に再使用機は0回。

宇宙・ロケット産業を追っている人むけ。数字と一次情報で書いています。

大樹町多目的航空公園の駐車場と管制塔、木製の案内看板
大樹町多目的航空公園(2010年撮影)。無料中継が行われる実績のある場所で、射点そのものではないMisaso- / CC BY-SA 3.0 / 出典

JAXAと将来宇宙輸送システム(ISC)は2026年10月14日、連名のプレスリリースで、JAXAの共創プログラムJ-SPARCの枠組みのもと「再使用型ロケットによる宇宙輸送サービス事業」に関する共創活動を2026年9月に始めたと発表しました。打ち上げの計画ではありません。ISCが着陸機構とエンジンの試験で得るデータをJAXAへ渡し、JAXAがそれを解析モデルの精度向上に使い、できたモデルをISCの開発に戻す、というデータと解析モデルの交換です。

この記事では、プレスリリースに書かれた交換の中身と、組む2者の現在地を数字で並べます。ISCは文部科学省のSBIR基金事業でフェーズ3に進めず、6月5日付で10.0億円の追加配分と2027年5月末までの延長が決まっています。JAXA側の再使用ロケット実験RV-Xは7月11日に約40秒の飛行試験を終え、日仏独のCALLISTOはまだ飛んでいません。そして当サイトの集計では、国内4射場の打ち上げ152回に再使用型の機体は0回です。

ヒーロー写真は大樹町多目的航空公園(2010年撮影)です。ISCが打ち上げ実証の場所にする北海道スペースポートの地元ですが、射点そのものでも、ISCの機体でもありません。

10月14日に決まったこと: 交換するのは試験データと解析モデル

プレスリリースの日付は「2026年(令和8年)10月14日」、発表者は「国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構/将来宇宙輸送システム株式会社」の連名です。共創の開始は発表より1か月あまり前の2026年9月で、ISCも同じ日に自社サイトで同じ内容を発表しています。

2者が出すものは、プレスリリースに次のように書かれています。ISC側はこうです。

ASCAシリーズの機体の概要や設計モデルをリファレンスとして提供し、特に「着陸機構」および「エンジン」に関する試験を実施し、その結果得られる「変形や歪み」および「配管の流量・圧力」などのデータをJAXAへ提供します

JAXA側はこうです。

ISCから提供された試験データを活用し、解析モデルの精度向上に取り組むとともに、特定の機体に依存しない汎用的なモデル化技術の構築を行います。さらに、JAXAは、構築したモデルをISCの開発に活用できるよう、モデルの適用方法や解析手法に関する技術支援を実施します

表にすると、交換の向きは次のとおりです。

出す側出すもの受け取る側が使う先
ISCASCAシリーズの機体概要・設計モデル、着陸機構とエンジンの試験で得る「変形や歪み」「配管の流量・圧力」のデータJAXAの解析モデルの精度向上、機体に依存しない汎用モデルの構築
JAXA構築したモデルと、その適用方法・解析手法の技術支援ISCの機体開発

なぜこの組み合わせなのかは、背景の節に書かれています。国内の現状は「国内では再使用型ロケットによる宇宙輸送サービスは未だ実現しておらず」。ISCの課題は「着陸機構やエンジンの試験データから適切に損傷や異常検知を再現・予測できるモデル化技術の構築」。JAXAはRV-XとCALLISTOで「着陸脚の設計や機体点検時の異常検知に役立てるモデル化技術に関する知見を蓄積してきました」が、「試験データとの比較・検証によるモデル精度の向上や特定の機体に限定されない汎用的なモデルへの発展が課題でした」。つまりISCには実機の試験データがあってモデルが無く、JAXAにはモデルがあって比較する実機データが足りない、という組み合わせです。

J-SPARCはJAXAが民間と事業を共創する枠組みで、脚注に「2018年5月から始動し、これまでに約60のプロジェクト・活動を進めています」とあります。コメントは2人分です。ISC代表取締役社長の畑田康二郎氏は、こう書いています。

JAXAが長年培ってこられた様々な知見と、ISCが持つ実機試験データを組み合わせることで、着陸機構や異常検知に関するモデル化技術を一段と高い精度で構築できると考えています

JAXA側はCALLISTOプロジェクトマネージャの石本真二氏で、CALLISTOで得るデータにISCの試験データを取り入れることでCALLISTOで開発したモデルの適用先を広げられる、将来の有人宇宙輸送システムに向けた活動にも寄与する、という趣旨です(原文の一部に脱字があるため、ここでは引用せず要約しました)。

プレスリリースに書かれていないことも記しておきます。共創活動の期間、金額、試験に使う機体の型番(ASCAの何号機か)は、いずれも記載がありません。

ISCの現在地: SBIRはフェーズ3に進めず、6月に10.0億円の追加で2027年5月末まで

ISCは会社概要によると設立が2022年5月2日、本社は東京都中央区日本橋、代表は畑田康二郎氏、資本金1,000万円で累計資金調達額は44億円です。拠点として福島支社(南相馬市)、鶴見ベース、福島ベース、室蘭ラボが挙げられています。

国の補助の現在地は、文科省のSBIRフェーズ3基金事業「民間ロケットの開発・実証」です。10月10日の記事で、ISCがフェーズ3に進めずフェーズ2の延長が認められたこと、追加配分の「別途審査」の結果が10月7日の報道発表に無いことを書きました。その別途審査の結果は、文科省と低炭素投資促進機構の連名で2026年6月5日付の資料に出ています。

区分事業期間金額
フェーズ1〜2024年9月末(令和6年9月末)上限 20.0億円
フェーズ2〜2027年5月末(令和9年5月末)上限 50.0億円
フェーズ2 追加配分同上0.85億円、10.0億円(6月5日付で決定したのは下線の付いた10.0億円)

事業計画名は「小型衛星打上げのための再使用型宇宙輸送システムの開発・実証」、代表スタートアップは「将来宇宙輸送システム株式会社」です。審査は「書面審査を実施し、その後プレゼンテーション審査を実施」。この追加配分の性格は、資料の注にこう書かれています。

事業フェーズ3への移行が認められなかった事業者について、本事業における研究開発成果を最大限活かすための取組を対象に、事業フェーズ2の資金の追加配分を実施

3月31日の文科省別添1は、ISCについて「フェーズ3への移行が認められなかった将来宇宙輸送システム株式会社については……フェーズ2事業期間の延長が認められています。なお、本延長期間における事業計画の妥当性及び資金の追加配分の必要性を判断するため、別途審査を実施する予定です」と書いていました。6月5日の決定がその答えです。ISCも同日に「10億円の追加配分」と「フェーズ2を2027年5月末まで延長」が認められたと発表しています。

同じ事業でフェーズ3に進んだ2社のフェーズ2追加配分は、3月31日公表でインターステラテクノロジズ(IST)が14.4億円、スペースワンが4.1億円でした。ISCの10.0億円はその間にあります。フェーズ2の期限2027年5月31日まで、今日2026年10月15日から228日です。

機体の進み具合は、ISCの発表から3つ拾えます。

ISCの畑田氏は10月14日〜16日に帯広で開かれる北海道宇宙サミット2026で、10月15日16時からのセッション「打上げを、日常に。―国内LSPが射場に求めるもの」に登壇する予定です。

JAXAの持ち札: RV-Xは7月11日に約40秒飛んで終了、CALLISTOは未飛行

JAXAが共創に持ち込む「知見」の元になった2つの実験機の現在地です。

RV-X(再使用ロケット実験)は、JAXA研究開発部門のページによると、2026年7月11日に能代ロケット実験場で飛行試験を行いました。

項目結果計画
飛行時間約40秒約40秒
最高高度約11m10m
水平移動約16m15m

飛行後の点検とデータ評価で「所期の成果が得られた」として、飛行試験シリーズは終了しています。機体は文科省宇宙開発利用部会(2025年7月4日)に出た資料で「全長約7.3m、直径約1.8m、質量約3.1トン」です。この飛行試験はJAXAのプレスリリース一覧(2026年)には載っておらず、関連する発信は2026年2月27日の記者説明会のみでした。飛行から今日で96日です。

CALLISTO(1段再使用飛行実験)は、JAXA、仏CNES、独DLRの3機関共同で、2025年7月4日の資料では「全長13.5m、直径約1.1m、質量約3.6トン」、「南米ギアナ宇宙センターで実施」、「2026年度に飛行試験開始を予定」と書かれています。同じ資料は、2024年11月の計画変更で飛行試験の開始を2024年度から2026年度に見直し、成功の基準(サクセスクライテリア)を「マッハ数0.8以上の遷音速飛行」に変更したことも記しています。JAXAのCALLISTOページには「胴体直径1.1m、全高13.5m、全備質量3,600kg」とありますが、飛行試験の時期と場所は書かれていません。つまり、2026年10月15日時点で、JAXAの一次情報から読めるCALLISTOの飛行開始時期は「2026年度」のままで、飛行の実績はまだありません。

2機を並べます。

機体全長・全高直径質量場所状況
RV-X約7.3m約1.8m約3.1t能代ロケット実験場2026年7月11日に約40秒飛行、シリーズ終了
CALLISTO13.5m約1.1m約3.6tギアナ宇宙センター(予定)未飛行。開始予定は資料で「2026年度」

プレスリリースが「着陸脚の設計や機体点検時の異常検知」の知見の元として挙げた2機のうち、実際に飛んだのはRV-Xだけで、その飛行は高度約11mです。

当サイトの集計で見る: 152回に再使用機は0、北海道の7回は全部弾道

当サイトが集計している国内4射場の打ち上げに、再使用型の機体があるかを数えました。

区分回数期間(日本時間)
国内4射場の打ち上げ(弾道飛行を含む)1521966年9月26日〜2026年8月11日
うち軌道投入をめざした便145同上
うち弾道飛行(MOMO)72017年7月30日〜2021年7月31日
うち再使用型の機体0

集計にある機体形態はH-IIA 202からSS-520-5まで25種類で、名前を全件見た範囲で、いずれも使い捨ての機体です。再使用型は0形態、したがって152回中0回です。プレスリリースの「国内では再使用型ロケットによる宇宙輸送サービスは未だ実現しておらず」と、当サイトの数字は矛盾しません。

ISCが「2028年3月まで」の打ち上げ実証の場所にしている北海道スペースポートの数字も見ます。

機体回数成功失敗期間(日本時間)軌道投入をめざしたか
MOMO v05142017年7月30日〜2020年6月14日いいえ
MOMO v12202021年7月3日〜2021年7月31日いいえ
北海道スペースポート 合計7342017年7月30日〜2021年7月31日軌道投入便は0

北海道の7回はすべてMOMOの弾道飛行で、軌道投入をめざした便は0回です。最後の打ち上げ(2021年7月31日)から今日で1,902日です。この7回に、ISCの「2028年3月まで」の実証も、当サイトの打ち上げ予定表に「2027年」という年単位の精度で載るISTのZERO初号機(LL2、2026年10月15日4時47分・日本時間のキャッシュ)も、まだ入っていません。

射場側の動きは1つあります。大樹町は、LC1の町が進めてきた主要工事の完了を発表し、2026年10月14日に「LC1 披露式典」を開きました。発表は「2022年に着工し、2026年度中の完成を予定」とし、最初の事業者はISTで「同社による固有の推進剤プラント設備工事等が進められています」と書いています。LC1の完成時期の経緯は9月26日の記事に、10月1日からの運営権方式は10月5日の記事に書きました。

この発表でわかっていないこと

今回の共創は、ロケットを飛ばす約束ではなく、着陸脚とエンジンの試験データと解析モデルを交換する約束です。組むISCは国の補助でフェーズ3に進めず、6月の10.0億円追加で2027年5月末まで、目標はHOSPOから2028年3月までの衛星打ち上げ実証。JAXAのRV-Xは高度約11mの飛行で終わり、CALLISTOは未飛行。そして国内4射場の152回に再使用機は0回、北海道の7回はすべて弾道飛行です。次に動くとすれば、CALLISTOの飛行試験の日付か、ISCの国内飛行試験の発表です。どちらも今日時点で日付はありません。