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民間ロケットの国の補助はISTに39.3億円追加、残る2社の実績は10回中成功3

・打ち上げ日和 編集部 ・約10分で読めます

文科省は10月7日、SBIR基金事業でISTのZEROに39.3億円の追加配分を決め、累計上限は193.7億円に。4社から2社に絞られた補助先の打ち上げ実績を当サイト集計で見ると、10回中成功3、軌道投入は3回中0です。

宇宙・ロケット産業を追っている人むけ。数字と一次情報で書いています。

大樹町多目的航空公園の駐車場と管制塔、木製の案内看板
大樹町多目的航空公園(2010年撮影)。無料中継が行われる実績のある場所で、射点そのものではないMisaso- / CC BY-SA 3.0 / 出典

文部科学省は2026年10月7日、中小企業イノベーション創出推進(SBIRフェーズ3基金)事業の宇宙分野「民間ロケットの開発実証」で、臨時のステージゲート審査の結果を発表しました。審査件数は1件、追加配分の決定も1件で、対象はインターステラテクノロジズ(IST)の小型ロケットZEROです。追加配分額は39.3億円。ISTは10月9日に発表し、この事業での累計交付上限は最大193.7億円になりました。

この事業の補助先は、当初の4社から2回の審査を経て、ISTとスペースワンの2社に絞られています。この記事では、文科省の資料で補助のフェーズ構造と金額を整理したうえで、残った2社がこれまでに国内で行った打ち上げを当サイトの集計で並べます。結論を先に書くと、2社の射場からの打ち上げは10回中成功3で、軌道投入をめざした便に限ると3回中成功0です。

ヒーロー写真は大樹町多目的航空公園(2010年撮影)です。ZEROの射場LC1や機体そのものは写っていません。

10月7日に決まったこと

文科省の報道発表は、事業名を「令和4年度補正予算 中小企業イノベーション創出推進(SBIRフェーズ3基金)事業 宇宙分野(民間ロケットの開発実証)」とし、審査件数1件・追加配分決定件数1件と記しています。審査方法は「書面審査、プレゼンテーション審査を実施」です。追加配分を行う理由は、こう書かれています。

事業目標が確実に達成されるとともに、本事業の成果の最大化に資する

通常のステージゲート審査(2024年9月、2026年3月)とは別の、臨時の審査委員会で審査したうえでの配分です。別添1は対象をこう記しています。

代表スタートアップ:インターステラテクノロジズ株式会社/事業計画名:小型人工衛星 打上げロケット ZERO の技術開発・飛行実証

ISTは10月9日の発表で「39.3億円の追加配分が決まりました」「これにより、本事業における累計交付上限額は最大193.7億円となりました」と書き、「早期のZERO飛行実証を通じて国内における自立的な打上げ能力確保・向上に貢献」するとしています。追加配分の使途の内訳は、文科省・ISTのどちらも公表していません。

累計上限193.7億円の内訳

別添1に書かれたISTのフェーズごとの上限と追加配分を表にします。

区分事業期間交付額上限・追加配分額
フェーズ1〜2024年9月末(令和6年9月末)20.0億円
フェーズ2〜2026年3月末(令和8年3月末)46.3億円
フェーズ2 追加配分同上14.4億円
フェーズ3〜2028年3月末(令和10年3月末)73.7億円
フェーズ3 追加配分(今回)同上39.3億円
合計193.7億円

ISTが3月31日のフェーズ3移行時に発表した累計は「最大約154.4億円」でした。今回の39.3億円を足すと193.7億円で、10月9日の発表値と一致します。繰り返しになりますが、これは「上限」で、交付済みの額ではありません。

ISTは同じ発表で、ウーブン・バイ・トヨタをリード投資家とする「計201億円の民間資金」の調達にも触れています。国の補助の上限193.7億円と民間資金201億円は、別の数字です。

4社から2社へ、残ったのはISTとスペースワン

文科省の3月31日の別添3は、この事業の経緯を「令和6年9月に実施したステージゲート審査で4社から3社へ、今回のステージゲート審査で3社から2社へ」と書いています。3月の審査は「補助対象事業者の絞り込み(3社⇒2社)を行うことを前提」とし、書面審査を2026年2月24日〜3月9日、プレゼンテーション審査を3月12日・13日・18日に行いました。フェーズ3へ進む必須条件は2つです。

3月31日の報道発表では審査件数3件・フェーズ3移行2件で、残ったのがISTとスペースワンです。事業の目的について別添3は「令和9年度を目標に、国際競争力を持ったロケットの開発・飛行実証を行うスタートアップ企業を支援」「令和5年度から支援が開始」と書いています。

スペースワンの数字も並べます。事業計画名は「増強型ロケットの開発、打上げ実証及び事業化」です。

区分IST(ZERO)スペースワン(増強型カイロス)
フェーズ1 上限20.0億円3.2億円
フェーズ2 上限46.3億円12.3億円
フェーズ2 追加配分14.4億円4.1億円
フェーズ3 上限73.7億円44.6億円(正確値 4,461,870,000円)
フェーズ3 追加配分39.3億円(2026年10月7日)なし(10月7日の審査件数は1件)
累計上限193.7億円(IST発表)64.2億円(当サイト計算)

フェーズ3に移れなかった将来宇宙輸送システムについては、別添1が「一定の技術力があると判断され、かつ、自ら事業継続の意思を示したことから、フェーズ2事業期間の延長が認められています」「資金の追加配分の必要性を判断するため、別途審査を実施する予定です」と書いています。その別途審査が行われたかどうかは、10月7日の報道発表に記載がありません。2024年9月の審査で外れた4社目の社名は、今回開いた資料には書かれていません。

残った2社の打ち上げ実績を当サイト集計で見る

補助の対象はこれから飛ぶ機体(ZEROと増強型カイロス)ですが、2社がこれまでに国内の射場から行った打ち上げを、当サイトの集計で並べます。射場別の数字です。

射場(運営・使用する社)回数成功失敗期間(日本時間)機体
北海道スペースポート(IST)7342017年7月30日〜2021年7月31日すべてMOMO(弾道飛行)
スペースポート紀伊(スペースワン)3032024年3月13日〜2026年3月5日すべてカイロス
2社合計10372017年7月30日〜2026年3月5日

10回中成功3です。ただし北海道の7回はすべてMOMOで、MOMOは軌道投入をめざさない観測ロケットです。軌道投入をめざした便だけに絞ると、2社の実績はカイロス1〜3号機の3回中成功0で、ISTは軌道投入の試行がまだ0回です。当サイトの国内4射場の集計は152回、そのうち軌道投入便は145回で、差の7回がこのMOMOの7回にあたります。

2社の10回が国内4射場の152回に占める割合は6.6%(10÷152)です。これは「占める割合」で、成功率ではありません。母数が10回・3回なので、当サイトは率ではなく「10回中3」「3回中0」の形で書きます。

失敗した7回を、集計(LL2)の記載から新しい順に並べます。理由の欄はLL2の英文を当サイトが要約して訳したものです。

打ち上げ日付(日本時間)LL2の記載理由(当サイト訳)
カイロス3号機2026年3月5日打ち上げ68.8秒後に飛行中断システムが作動。誤作動の可能性を含め原因調査中
カイロス2号機2024年12月18日80秒後に第1段ノズルの推力方向制御が故障し、姿勢を失った
カイロス初号機2024年3月13日離昇数秒後に飛行中断システムが作動し、機体が分解
MOMO 5号機2020年6月14日離昇後に姿勢制御を失った
MOMO 4号機2019年7月27日打ち上げ異常
MOMO 2号機2018年6月30日点火2秒後にエンジンが停止し、射点に落下して爆発
MOMO 初号機2017年7月30日エンジン点火の約80秒後に飛行を中断

北海道スペースポートの最後の打ち上げ(2021年7月31日・MOMO)から、今日2026年10月10日で1,897日です。スペースポート紀伊の最後の打ち上げ(2026年3月5日・カイロス3号機)からは219日です。北海道の集計に入っていない2025年7月の1回(jtSPACEのVP01)については9月26日の記事に、カイロス4号機の日程が未定であることは9月18日の記事に書いたので、ここでは繰り返しません。

期限までの日数と、まだ無い日付

補助の期限と、射場・機体の現在地を日数で並べます。

節目日付2026年10月10日からの日数根拠
フェーズ3の事業期間の終了2028年3月31日あと538日文科省 別添1
LC1の供用開始の目標(SPACE COTAN「2026年度末」)2027年3月31日あと172日10月5日の記事
LC1の射場全体の工事完成の予定2027年第1四半期IST 2026年7月23日の投稿
ZERO初号機の打ち上げ記載なしISTのZEROページ、文科省の別添1

ISTは7月23日の投稿で、LC1について「2026年7月現在、主要な発射台、火炎処理道、推進剤プラントの大部分を含むコア構造要素が完了」「2027年第1四半期には射場全体の工事完成を予定」と書いています。同じ投稿にある「LC0から観測ロケットMOMOを7回打ち上げてきた」は、当サイトの北海道7回と一致します。

ZERO初号機の打ち上げ日は、ISTのZEROページにも、文科省の10月7日・3月31日の資料にも書かれていません。フェーズ3の必須条件にある「TRLを2027年度中までにレベル7まで引き上げる計画」は補助の条件であって、打ち上げ予定日ではありません。ISTが3月31日の発表で書いた「ZERO初号機は国内外の民間衛星7基の搭載が決まっている」も、日付を伴っていません。当サイトの打ち上げ予定表(LL2、2026年10月10日4時47分・日本時間のキャッシュ)でも、ZERO初号機は「2027年」という年単位の精度で、日付未定のままです。

国がZEROに積んだ補助の上限は193.7億円で、期限は2028年3月末、あと538日です。その補助を受ける2社の国内での打ち上げは、当サイト集計で10回中成功3、軌道投入は3回中0で、北海道スペースポートからは1,897日打ち上げがありません。次に動くとすれば、LC1の工事完成(2027年第1四半期の予定)か、ZERO初号機の日付の公表です。どちらも今日時点で日付はありません。