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カイロス4号機の現在地、町は見学場の委託先候補を選び打ち上げ日は未定

(2026年10月23日(金) 更新) ・打ち上げ日和 編集部 ・約11分で読めます

串本町と那智勝浦町は4号機の見学場運営を2027年3月末までの期間で公募し、受託候補者を選んだ。一方でスペースワン公式にも打ち上げ予定データベースLL2にも4号機の日付は無い。3機の間隔と発表日からのずれを実績で示す。

宇宙・ロケット産業を追っている人むけ。数字と一次情報で書いています。

建設中のスペースポート紀伊を上空から撮った空中写真
スペースポート紀伊の空中写真(2019年10月・建設中)。完成後の現在の姿とは異なる国土地理院 / 出典明示で利用可(国土地理院 空中写真) / 出典

スペースワンのカイロスロケット3号機は、2026年3月5日11時10分00秒にスペースポート紀伊(和歌山県串本町)から打ち上げられ、飛行中断措置で終わりました。カイロスはこれで3回中3回が失敗です。

それから197日たった2026年9月18日、4号機の打ち上げ日はまだどこにも出ていません。一方で、地元の串本町と那智勝浦町は「4号機の打ち上げのみ」を対象にした見学場の運営委託を7月に公募し、8月28日に受託候補者を選んでいます。契約の履行期間は2027年3月31日までです。

この記事は、会社は「未定」、町は「2027年3月末まで」で動いているというずれを、公開文書と当サイトの集計で記録するものです。4号機がいつ上がるかは、この記事では言えません。

3号機から197日、4号機の日付はどこにも無い

2026年9月18日時点で、4号機の打ち上げ日を書いた文書は次のどこにもありません。

見た場所4号機について確認日
スペースワンのニュース一覧最新は8月26日の Sarmony との覚書。4号機の日付・搭載物の発表は無い2026-09-18
LL2 の今後の打ち上げ(KAIROS で検索)0件2026-09-18
当サイトの予定表(11件)スペースポート紀伊の便は無い2026-09-18 4:17 取得
カイロスロケット打上げ応援サイト「カイロス3号機の打上げ応援イベントは終了しました」。4号機の記載なし2026-09-18
和歌山県のカイロス案内ページ初号機〜3号機の予定日と結果のみ。4号機の記載なし2026-09-18

スペースワンの8月26日の発表は、Sarmony(超低高度軌道での運用をめざす薄型のSAR衛星を開発する会社)との覚書で、2028年中の技術実証衛星の打ち上げをめざす内容です。3号機にも4号機にも触れていません。

串本町と那智勝浦町は「4号機のみ」を対象に見学場の運営を公募した

町の側は動いています。串本町ロケット推進室のページに「カイロスロケット打上げ見学場等企画運営業務委託に係る共同プロポーザル」が載っています。実施要領の公表は7月7日で、串本町と那智勝浦町の共同公募です。8月28日に参加表明者のプレゼンテーションとヒアリングを行い、受託候補者として株式会社日本旅行を選定したと書かれています。

公募の文書から拾える条件はこうです。

項目内容出典
対象「4号機の打上げのみ対象」質問回答書② No.4
履行期間契約締結日の翌日から2027年3月31日まで実施要領
期間外に延期したら履行期間の延長に係る変更契約を締結する予定質問回答書② No.5
串本町の見学場田原海水浴場(定員2,000人)共同仕様書
那智勝浦町の見学場旧浦神小学校(定員2,000人)。屋上を使った特別プランを求めている共同仕様書
予算上限串本町 8,755千円、那智勝浦町 5,017千円(いずれも税込。「見学場等の料金を差し引いた金額」と注記)実施要領
延期の費用予算上限には「打上げ予定日から延期した場合(1回分)の費用」を含む質問回答書② No.8
対応義務「当該打上げが終了するまで」質問回答書② No.9

見学場の場所と定員は、3号機のときと同じです(応援サイトの記載では、田原海水浴場と旧浦神小学校はいずれも射場から約2km)。これまでの見学場運営はスペースポート紀伊周辺地域協議会が実施してきたと質問回答書①にあり、今回は両町が自ら公募して事業者を選ぶ形になります。

仕様書には、町側が打ち上げ日をどう見ているかが逐語で書かれています。

打上げ予定日等は、別途通知するが、打上げ予定日の公表が打上げ日の約2ヶ月前となる可能性があることや、打上げ延期、特に直前の延期決定の可能性もあることに十分留意し、それを想定した業務内容とすること

また、見学者への周知事項として次の一文があります。

ロケット打上げは、延期されることが多く、必ずしも打上げの見学を保証するものではないこと

つまり町は、打ち上げ日の公表が約2か月前になること、直前に延期されうること、期間内に上がらなければ契約を延ばすことを織り込んで公募しています。ただしこれは町の契約の話であって、スペースワンの計画ではありません。

3号機の原因は「静電気ノイズによる通信途絶」と説明された、ただし公式文書はまだ無い

スペースワンが3月5日に出した打ち上げ結果の発表は、「ミッション4のステップ2の段階で飛行中断措置」をとったこと、詳細な飛行データを確認中であること、顧客と関係者への謝罪までで、飛行中断の高度・原因・搭載衛星は書かれていません。

原因の説明は、報道で分かる範囲です。わかやま新報(8月31日)とマイナビニュース(9月2日)によると、スペースワンは8月30日にオンラインで記者会見を開き、次のように説明しました。

2026年9月18日にスペースワンのニュース一覧を見た範囲では、この説明を載せた文書はありません。当サイトが2026年9月4日に取得したLL2の登録では、3号機の失敗理由は「T+68.8秒にAFTS(自律飛行安全システム・当サイト訳)が作動、誤作動の可能性を含め原因調査中」という、8月30日より前の記述でした。「静電気ノイズ」は会社が会見で説明し各紙が報じた内容であって、公式サイトで読める一次文書にはまだなっていません。

カイロス3機の間隔と、発表日からのずれ

当サイトの集計から、カイロス3機の実績を並べます。時刻は日本時間です。

便打ち上げ(JST)前の便からの間隔LL2の失敗理由(2026年9月4日取得・原文を当サイト訳で要約)スペースワンの区分
初号機2024-03-13 11:01:12—リフトオフ数秒後に AFTS が作動し機体が分解ステップ1まで
2号機2024-12-18 11:00:00280日T+80秒に第1段ノズルの推力方向制御(TVC)の不具合で姿勢を喪失ステップ3(フェアリング開頭)まで
3号機2026-03-05 11:10:00442日T+68.8秒に AFTS が作動、誤作動の可能性を含め調査中ステップ2の途中まで

右端の区分は、スペースワンが3号機の結果発表に添えたPDF「ミッション4の詳細」の図に基づきます。ミッション4は「カイロスによる人工衛星の軌道投入」で、ステップ1が打ち上げ実施(発射準備完了、リフトオフ)、ステップ2が第1段ミッション完了(1段燃焼終了、分離、2段点火)、ステップ3がフェアリング開頭、と続いてステップ7で完了です。3機ともステップ3より先には進んでいません。

飛行間隔は280日から442日へ伸びました。母数が2区間しか無いので、傾向とは言えません。

次に、初回に発表された打ち上げ予定日と実際の打ち上げ日のずれです。予定日は和歌山県のページ、実績はLL2です。

便初回発表の予定日実際ずれ
初号機2024-03-092024-03-134日
2号機2024-12-142024-12-184日
3号機2026-02-252026-03-058日

3件中3件が、初回発表の日には上がっていません。これはカイロス3件だけの記録で、国内の打ち上げ全体の延期傾向には広げられません。当サイトはまだ延期率の実測値を持っていません。

3号機の8日は、スペースワンのプレスを順に開くと内訳が分かります。

発表日内容
2025-12-15打ち上げ予定日を2026年2月25日(水)11:00〜11:20に設定。予備期間 2月26日〜3月25日
2026-02-22「天候判断に係る総合的な分析の結果」延期。「2月中の打上げは行わない」。新日程は「打上げ予定日の2日前までに公表」
2026-02-273月1日(日)11:00:00に設定
2026-03-01「天候分析の結果、打上げの延期を決定」。3月4日以降へ
2026-03-023月4日(水)11:00:00に設定
2026-03-043月5日(木)11:10:00へ(下記)
2026-03-05打ち上げ実施、飛行中断

3月4日の延期理由は逐語でこうです。

打上げ直前の最終自動チェックにおいて、測位衛星信号の受信状態が安定せず、LSC(Launch Safety Control:安全監視システム)の安全機能が作動したため、打上げ直前に緊急停止

天候による延期が2回、打ち上げ直前の安全機能作動による停止が1回で、合わせて8日です。2月22日の発表には「新たな打上げ日につきましては、打上げ予定日の2日前までに公表いたします」とあり、実際に2月27日、3月2日、3月4日の発表はいずれも打ち上げの2日前か前日でした。町の仕様書が「特に直前の延期決定の可能性」と書いているのは、この経緯と符合します。

失敗を国内全体の中に置くと、2023〜2026年(日本時間の暦年)の国内4射場の打ち上げは17回(2023年3回、2024年7回、2025年4回、2026年3回)で、成功12・失敗5です(9月4日時点の集計。10月20日のH3ロケット10号機〔MMX・JAXAは「計画どおり飛行」と発表〕を加えると18回・成功13・失敗5で、失敗の内訳は変わりません)。失敗5件のうち3件がカイロス、2件がH3(2023年3月7日のALOS-3、2025年12月22日のみちびき5号機)です。

なお、スペースワンは2026年4月17日の発表で、宇宙戦略基金の補助金交付(26億5,740万円)にあわせて「2020年代に年間20機、2030年代中には年間30機の打上げを目標」と書いています。実績は2024年3月から2026年3月までの2年間で3回です。

町の契約期間から逆算すると何が言えて、何が言えないか

言えること。町の履行期間の末日である2027年3月31日は、3号機の打ち上げから391日です。もし4号機がこの期間内に上がれば、2号機から3号機までの442日より短く、初号機から2号機までの280日より長い間隔になります。

推定として言えること。町の仕様書とスペースワンの会見説明(報道による)の両方が「打ち上げの約2か月前に公表」を前提にしています。履行期間内に上げるなら、公表は2027年1月末ごろまでに出る計算です。これは逆算による【推定】で、スペースワン自身は「未定」としか言っていません。

言えないこと。「4号機は2026年度内に上がる」とは書けません。2027年3月31日は町の契約期間であって、スペースワンの計画の期限ではありません。質問回答書②にあるとおり、期間外に延期された場合は契約を延長する前提で組まれています。4号機に何を載せるかも、公開文書には無いのでこの記事では扱いません。

次に動きが出るとすれば、見る場所は次の4つです。

打ち上げ日が出たら、当サイトは「初回発表日」として記録します。3機とも初回発表日には上がっていない、という表に4件目が加わるかどうかは、そのときに分かります。