北海道の大樹町(たいきちょう)にある北海道スペースポートで、新しいロケットの発射場「Launch Complex 1(LC1)」のお披露目の式典が、2026年10月14日(水)に開かれました。発表したのは大樹町で、運営会社の SPACE COTAN(スペースコタン)のサイトと PR TIMES に載っています。
ニュースで見た人が気になるのは、「もう北海道からロケットが上がるのか」だと思います。答えは「まだ」です。終わったのは町が担当する工事で、ロケット会社が担当する工事は続いています。発射場全体が使えるようになるのは2026年度の終わり、つまり2027年3月ごろの予定です。最初に上がるロケットの日付は、まだ決まっていません。
この記事は、10月14日の発表に書いてあることと、当サイトの数え方で分かることだけで、「できたのか、できていないのか」を整理します。上の写真は大樹町多目的航空公園で、新しい発射場 LC1 そのものは写っていません。
10月14日に何があったのか
大樹町の発表は、こう始まります。
北海道大樹町(町長:黒川 豊)は、北海道スペースポート(HOSPO)における新たな打上げ射場「Launch Complex 1(以下、LC1)」について、町が進めてきた主要工事が完了したことをお知らせします。これに伴い、2026年10月14日(水)に「LC1 披露式典」を開催しました。 (大樹町のプレスリリース・SPACE COTAN サイト掲載・2026年10月14日)
「射場(しゃじょう)」は、ロケットを打ち上げる場所のことです。この日に町が発表したのは、「町が進めてきた主要工事が完了」したことと、「披露式典を開催」したことの2つです。
LC1 の工事は2022年に始まりました。発表には、式典をどこで開いたか、誰が何人出席したか、工事にいくらかかったかは書かれていません。当サイトも書きません。町は LC1 を「国内初の自治体整備による公共射場」と説明していますが、これは町の言い方で、当サイトでは確かめていません。
発射場は「町が造る部分」と「ロケット会社が造る部分」に分かれている
発表によると、LC1 は次の設備でできています。
- 組立棟: ロケットを最終的に組み立てる建物
- 推進剤プラント設備: ロケットに推進剤(燃料と、燃料を燃やすための酸化剤)を入れる設備
- 射点設備: ロケットを実際に打ち上げる台のまわりの設備
- 煙道: 打ち上げのときに出る燃焼ガスを、安全に外へ出す通り道
このうち「大樹町が整備を担う施設の主要工事が完了しました」というのが、今回の中身です。
LC1 の仕組みはこうです。町が、いろいろなロケット会社が共通で使える部分を造ります。ロケットの打ち上げに必要な会社ごとの設備は、使う会社が自分で造ります。発表はこれを「民間に開かれた射場」と呼んでいます。最初に使う会社として選ばれているのは、インターステラテクノロジズ(IST)です。IST は2025年6月、応募した国内外9社の中から優先事業者に選ばれ、町と基本合意書を結びました。
発表は、IST が担当する「固有の推進剤プラント設備工事等」が今も進められている、と書いています。つまり、推進剤プラントのうち IST の分は終わっていません。IST 側は7月23日の時点で、「主要な発射台、火炎処理道、推進剤プラントの大部分を含むコア構造要素が完了」し、組立棟の建設も並行して進んでいる、と書いていました。
町の工事が終わり、会社の工事が続いている。10月14日の時点の LC1 は、この状態です。この発射場の運営が10月1日から SPACE COTAN に移った経緯は、10月5日の記事に書きました。
いつから打ち上げられるのか、全体の完成は2026年度中
「2026年度」は、2026年4月から2027年3月までの1年間のことです。発射場がいつ使えるようになるかは、出した人によって書き方が少しずつ違います。
| 誰が | いつ出したか | 書いてあること |
|---|---|---|
| 大樹町 | 2026年10月14日 | LC1 は「2026年度中の完成を予定」 |
| SPACE COTAN | 2026年10月1日 | LC1 は「2026年度末の供用開始を予定」 |
| IST | 2026年7月23日 | 「2027年第1四半期には射場全体の工事完成を予定」 |
「供用開始(きょうようかいし)」は、施設が使えるようになることです。「2026年度末」はその年度の終わりごろ、「2027年第1四半期」は2027年1月から3月のことです。3つを重ねて読むと、発射場全体が使えるようになるのは2027年1月から3月ごろ、というのが当サイトの読みです。これは3つの文書を並べた当サイトの推定で、どこかに「◯月◯日」と書いてあるわけではありません。
今日(10月17日)から、2026年度の終わりの2027年3月31日までは165日です。
最初に上がる予定のロケットは、IST が LC1 から人工衛星を打ち上げるために開発している ZERO(ゼロ) です。ZERO はまだ一度も飛んでいません。ZERO の1号機がいつ上がるかは、IST も町も今回の発表には書いていません。当サイトが追っている打ち上げ予定表でも、ZERO の1号機は「2027年」としか決まっておらず、状態は「未定」です。発射場が使えるようになっても、すぐに打ち上げの日が来るわけではありません。
LC1 の完成時期は、町のページの「2025年度」から、今回の「2026年度中」まで動いてきました。その経緯は9月26日の記事にあります。
北海道からロケットは何回上がったことがあるのか
当サイトは、国内の4つの射場からの打ち上げを数えています。その数え方では、北海道スペースポートからの打ち上げは7回です。最初は2017年7月30日、最後は2021年7月31日で、7回のうち成功3回、失敗4回です。IST 自身も7月23日の投稿で、今ある射場 LC0 から「観測ロケットMOMOを7回打ち上げてきた」と書いています。
7回はすべて IST の MOMO(モモ) という小型のロケットでした。MOMO は宇宙空間まで上がって、そのまま落ちてくる「観測ロケット」です。人工衛星を、地球のまわりを回る道(軌道)に乗せるロケットではありません。つまり当サイトの集計では、北海道から人工衛星を軌道に乗せる打ち上げは0回です。種子島・内之浦・スペースポート紀伊の3つの射場には軌道に乗せようとした打ち上げがあり、0回なのは北海道だけです。
今回の LC1 は、発表に「小型人工衛星を搭載したロケットを打上げるための射場」と書かれています。SPACE COTAN の施設の案内でも「人工衛星の打上げに対応する小型ロケット用の射場」です。この射場で「人工衛星用」と書かれた射点は、当サイトの集計では初めてです。LC1 が使えるようになって ZERO が上がれば、北海道から人工衛星を軌道に向けて打ち上げる、初めての試みになります。
次に何を見ればいいか
まず、次に日本で上がるロケットは北海道ではありません。10月20日(火)4時41分3秒に、種子島宇宙センターから H3 ロケット10号機が、火星の衛星を調べる探査機 MMX を乗せて上がる予定です。今日から3日後です。自分の町の空から見る方法は10月4日の記事にあります。
北海道の発射場について、いまできることは3つです。
- 「使えるようになった」の発表を待つ。 町と SPACE COTAN の予定では2026年度の終わりまで、つまり2027年3月31日までです。出たら、このサイトでもお知らせします
- ZERO の1号機の日付は、IST の発表を見る。 今日の時点では、IST も町も日付を出していません。予定表の「2027年」は、年しか決まっていないという意味です
- 北海道へ見に行く予定は、まだ立てない。 発射場が使えるようになっても、打ち上げの日は別に決まります。日付が出てから動いても間に合います
LC1 の供用開始と ZERO 1号機の日付が決まったら、この記事に更新日を付けて追記します。