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北海道の宇宙港が米バージニアと合意、中身は教育と町づくりの7項目

・打ち上げ日和 編集部 ・約9分で読めます

大樹町とSPACE COTANが米バージニア州の宇宙港運営機関と基本合意書を結んだと10月21日に発表されました。検討項目は教育4つとまちづくり3つで、打ち上げの話は入っていません。当サイト集計で大樹町の打ち上げは7回、軌道投入は0回です。

宇宙にくわしくない人むけ。専門用語を使わずに書いています。

大樹町多目的航空公園の駐車場と管制塔、木製の案内看板
大樹町多目的航空公園(2010年撮影)。無料中継が行われる実績のある場所で、射点そのものではないMisaso- / CC BY-SA 3.0 / 出典

北海道の大樹町(たいきちょう)と、町の宇宙港を運営する会社 SPACE COTAN(スペースコタン)が、アメリカ・バージニア州の宇宙港を運営する機関と基本合意書を結んだ、と発表されました。発表は SPACE COTAN の自社サイトで、2026年10月21日の掲出です。

「日本とアメリカの宇宙港が連携」と聞くと、ロケットの打ち上げの話かと思います。でも、今回決まったのはそこではありません。合意書に並んでいる7つの項目は、学校の交流と町づくりだけです。

この記事は、10月21日の発表に書いてあることと、当サイトの数え方で分かることだけで、「何が決まって、何が決まっていないのか」を整理します。上の写真は大樹町多目的航空公園です。新しい発射場「LC1」でも、合意書を結んだ会場でもありません。

10月21日の発表で、誰と誰が何を結んだと分かったのか

結んだのは3者です。

結んだのは MOU(エムオーユー)です。日本語では「基本合意書」で、「これから一緒にやることを検討します」という約束のことです。契約ではありません。今回の発表にも、いつまでに何をやるか、お金をどれだけ出すかは書かれていません。

いつ結ばれたのかは、分かりません。発表の本文には「締結いたしました」とあるだけで、締結の日付が書かれていないからです。10月21日は、この発表がサイトのニュース一覧に載った日です。当サイトは発表の日と締結の日を分けて書きます。

発表のサブ見出しは、そのまま読むとこうです。「日米の宇宙港地域が教育振興・まちづくりで連携検討」。打ち上げという言葉は、ここには入っていません。

約束の中身は7項目、ぜんぶ「打ち上げ以外」

発表の「基本合意書の概要」には、2つの分野で合わせて7つの項目が並びます。7項目の前には、共通の前置きが1つだけ置かれています。そのまま読むと「大樹町、SPACE COTAN、Virginia Spaceport Authorityは、以下の項目に関する今後の連携について検討します。」です。つまり7項目は、決まった事業ではなく「これから検討すること」の一覧です。

教育振興(4つ・発表の表記のまま)

まちづくり(3つ・発表の表記のまま)

7項目の中に、ロケットの打ち上げ、技術の協力、相手の発射場をお互いに使うといった話は出てきません。ただし、合意書そのもの(本文)は公開されていません。ですから「打ち上げでは協力しないと決まった」とは言えません。当サイトが言えるのは、公開された7項目にその話が無い、というところまでです。

SPACE COTAN の小田切CEOのコメントは、そのまま読むとこうです。

HOSPOは2024年10月に世界5大陸8つの商業宇宙港と国際協力に関する覚書を締結し、宇宙港間の連携を進めてまいりました。今回のMOUは、2024年10月の覚書を基盤とし、教育とまちづくりという地域に根ざした領域を一歩前進させるものです。宇宙港の価値はロケットの打上げだけではありません。地域の人材育成や地域活性化を進める大きな力をを秘めています。… (SPACE COTAN の2026年10月21日掲出の発表・小田切義憲CEOのコメント。「力をを」は発表の原文のままです。コメントはこの先も続きます)

2024年10月の覚書は、5つの大陸の8つの宇宙港が相手です。発表の「北海道スペースポート(HOSPO)とは」の欄にも「2024年10月に世界5大陸の8商業宇宙港で国際協力に関する覚書(MOU)を締結し」と書かれています。ただし当サイトはその覚書の資料そのものを見ていないので、SPACE COTAN の発表に書かれている範囲で書いておきます。

相手のバージニア州の宇宙港は、どんな場所か

Virginia Spaceport Authority は、発表の会社概要によると1995年設立のバージニア州の政府機関です。NASA のワロップス飛行施設の中にある商業宇宙港「Mid-Atlantic Regional Spaceport(MARS/マーズ)」を所有して運営しています。「商業宇宙港」は、民間の会社がロケットを打ち上げるために使う宇宙港のことです。

発表はMARSをこう説明しています。「MARSは軌道投入打上げについてFAA(米国連邦航空局)のライセンスを有する米国内でも数少ない商業宇宙港のひとつ」。アメリカでは、民間のロケットを打ち上げるのに国(FAA)の許可が必要で、その許可を持っている宇宙港は多くない、という意味です。

MARS の公式サイトには「完了したミッション」の一覧があります。そこに並ぶ打ち上げは、いちばん古いものが2006年12月16日、いちばん新しいものが2026年2月27日でした。件数は書きません。当サイトがこのページを取るたびに読み取れる件数が食い違い、人が目視で数え直せていないためです。数え直すまで、当サイトは件数を使いません。

発表は、2つの地域の共通点を「ともに第一次産業を基盤とし、沿岸地域に宇宙港を擁するという共通点を持ち」と書いています。大樹町について発表の町の概要は「人口5,100人の一次産業が中心の町です」と書いています。一次産業というのは農業・林業・漁業のことですが、大樹町で何がどれだけ盛んなのかは今回の発表には書かれていません。町は1984年の北海道航空宇宙産業基地構想で航空宇宙基地の適地とされ、以降約40年にわたって宇宙のまちづくりを進めてきた、というのが発表の説明です。町の公式サイトも「今から約40年前(1980年代)に『航空宇宙産業基地』の候補地とされて以来」と書いています。

黒川町長のコメントの一部を、そのまま引きます。

…40年にわたり宇宙のまちづくりを進めてきた本町にとって、同じように宇宙港とともに歩んできた地域と直接つながれることは、大きな財産です。… (SPACE COTAN の2026年10月21日掲出の発表・黒川豊大樹町長のコメント。前後に文が続きます)

大樹町からロケットは、何回上がったことがあるのか

当サイトは国内4つの射場(ロケットを打ち上げる場所)からの打ち上げを数えています。その数え方では、北海道スペースポートからの打ち上げは7回です。最初が2017年7月30日、最後が2021年7月31日で、成功3回・失敗4回でした。

この7回はすべて、インターステラテクノロジズの小型ロケット MOMO(モモ)です。MOMO は宇宙の高さまでまっすぐ上がって、そのまま落ちてくるタイプで、これを弾道飛行といいます。打ち上げたものを地球のまわりを回る道(軌道)に乗せる打ち上げは軌道投入と呼びますが、MOMO はそれをめざしていません。

つまり当サイトの集計では、北海道スペースポートからの軌道投入は0回です。種子島・内之浦・スペースポート紀伊の3つには軌道投入をめざした打ち上げがありますが、0回なのは北海道だけです。

「宇宙港の価値はロケットの打上げだけではありません」という小田切CEOの言葉は、この0回のとなりに置くと分かりやすくなります。ロケットがまだ軌道に向かって上がっていない宇宙港が、先に結んだのは、学校の交流と町づくりの約束だったということです。

打ち上げの予定は、これで変わるのか

変わりません。今回の7項目に打ち上げの話は無く、発表にも打ち上げの日付は出ていません。

大樹町の新しい発射場 LC1 が使えるようになる(供用開始)のは、SPACE COTAN の10月1日の発表では2026年度末、つまり2027年3月ごろの予定です。この経緯は10月5日の記事に書きました。LC1 から最初に上がる予定のロケット ZERO(ゼロ)の1号機の日付も、まだ決まっていません。

日本全体で見ても、年内に予定が入っているのは2便だけで、どちらも日付が決まっていません。当サイトの打ち上げ予定表では、イプシロンS(内之浦)と H3ロケット(種子島・きく9号)の2件が「2026年」としか決まっておらず、状態は「未定」です。

今日の時点で、読む人ができることは3つです。

  1. 北海道へ見に行く予定は、まだ立てなくていい。 発射場が使えるようになっても、打ち上げの日は別に決まります。日付が出てから動いても間に合います
  2. LC1 が「使えるようになった」という発表を待つ。 町と SPACE COTAN の予定では2027年3月ごろまでです。出たら、このサイトでもお知らせします
  3. 学校の交流として気になる人は、大樹町の発表を見る。 当サイトが10月26日に町の公式サイトを見た範囲では、今回のMOUの掲載は見つかりませんでした。これから町の広報に出る可能性があります

教育やまちづくりの中身は、これから検討される段階です。具体的な事業や時期が発表されたら、この記事に更新日を付けて追記します。