くわしく ニュース 北海道スペースポート 大樹町 SPACE COTAN LC1 コンセッション PFI ZERO インターステラテクノロジズ 集計

北海道スペースポートは10月1日から運営権方式に、LC1の供用は2026年度末へ

・打ち上げ日和 編集部 ・約14分で読めます

大樹町の北海道スペースポートは2026年10月1日からSPACE COTANが運営権方式で運営し、期間は2041年9月までの15年です。運営権対価はゼロ、町の負担減は約1,260万円の見込み、LC1の供用は「2026年度末」です。

宇宙・ロケット産業を追っている人むけ。数字と一次情報で書いています。

大樹町多目的航空公園の駐車場と管制塔、木製の案内看板
大樹町多目的航空公園(2010年撮影)。無料中継が行われる実績のある場所で、射点そのものではないMisaso- / CC BY-SA 3.0 / 出典

大樹町が所有する北海道スペースポート(HOSPO)の運営が、2026年10月1日から公共施設等運営権(コンセッション)方式で SPACE COTAN に移りました。対象は新射場 Launch Complex 1(LC1)・滑走路・格納庫・宇宙交流センター SORA の4施設で、事業期間は2026年10月1日から2041年9月30日までの15年です。SPACE COTAN と大樹町の両方が一次情報として出しています。

ただし、肝心の LC1 はまだ使えません。町が2026年4月に出した実施方針は「令和8年10月に供用可能となる予定」と書いていましたが、10月1日の SPACE COTAN のリリースでは「2026年度末の供用開始を予定」に変わっています。この記事は、運営権の中身(誰が・いつまで・いくらで)を文書の数字で整理し、LC1 の供用時期の記述を日付順に並べたうえで、当サイトの集計でこの射場の打ち上げがどこまで記録されているかを示すものです。

10月1日に何が変わったか、対象は4施設で期間は2041年9月30日までの15年

SPACE COTAN は10月1日のリリースで、事業の概要を次のように書いています。

対象施設:北海道スペースポート(HOSPO)- LC1、滑走路、格納庫、SORA 運営権者:SPACE COTAN株式会社 運営権の内容:公共施設等運営権(コンセッション)方式による、HOSPOの維持管理及び運営 事業期間:2026年10月1日 ~ 2041年9月30日 (SPACE COTAN「北海道スペースポート(HOSPO)の運営開始」2026年10月1日)

SPACE COTAN は「2021年4月20日に北海道大樹町および道内企業などが出資し設立」された会社で、これまでは「LC1建設に必要な資金調達や、滑走路や格納庫、大樹町宇宙交流センターSORAの管理業務を通じて、大樹町をサポートしてきました」と自らの役割を書いています。10月1日からは、支援する側ではなく運営権を持つ側になった、というのが今回の変化です。

対象4施設のうち、滑走路は「1995年に全長1,000mで整備。2024年には300m延伸し、現在の全長は1,300m」。LC1 は「小型人工衛星打上げ用ロケット射場。2022年度に整備に着手し、2026年度末の供用開始を予定」で、IST が優先利用事業者として選定され、同社の ZERO の打ち上げが行われる予定、と書かれています。

町の側の文書で確かめると、大樹町の運営権設定のページ(更新日2026年5月15日)は、対象施設を「北海道スペースポート(LC1、滑走路、格納庫、SORA等)」、選定事業者を SPACE COTAN としています。選定は公募ではなく指名で、町が示した「運営権者が備えるべき要件」5項目を満たす「唯一の民間事業者」として選んだ、という書き方です。要件5項目のうち4番目は「国等が主導する補助事業において採択を受けるなど、ロケット射場の研究開発能力及び実績が広く認められていること」で、これに対応する指名理由として町は「宇宙戦略基金事業においてJAXAから採択を受けており、ロケット射場の研究開発能力及び実績が広く認められている」を挙げています。同じページのスケジュール(予定)は「8月頃 事業計画書の提出」「9月上旬 町議会へ運営権設定にかかる議案を提出」「9月中旬 契約締結」「10月1日 事業開始」で、実際に10月1日に事業が始まっています。ただし当サイトは9月の町議会の議案や議決結果を開いていないので、「議案が可決された」「契約が9月中旬に結ばれた」とは書けません。言えるのは「町の予定表どおりの日に始まった」までです。

事業期間の数字は、特定事業の選定(令和8年5月15日)も「15年間(最長で30年間)の長期・継続的な事業運営を認める」と書いています。実施方針(令和8年4月)によれば、事業期間は「射場運営事業が開始される日から、15年後の応当日の前日」まで。延長には町と運営権者の「合意延長」と、運営権者が「事業終了日の4年前の応当日まで」に届け出れば15年以内で延ばせる「オプション延長」があり、運営権の存続期間は「運営権の設定を受けた日の30年後の応当日の前日を超えることはできない」とされています。

項目文書の記述当サイトの計算
事業期間2026年10月1日〜2041年9月30日(15年)—
オプション延長の届出期限事業終了日の4年前の応当日2037年9月30日
存続期間の上限運営権設定日の30年後の応当日の前日設定日が2026年10月1日なら2056年9月30日

存続期間の上限は、運営権の設定日が10月1日だった場合の計算です。設定日そのものはリリースに明記されていないので、条件つきで書いています。

運営権対価はゼロで町が運営費を支援、PFIで町の負担減は15年で約1,260万円の見込み

運営権者が町に払う「運営権対価」は、今回はゼロです。実施方針はこう書いています。

本事業は我が国に例を見ない公設のロケット射場の運営事業を行うものであり、現時点で想定される射場運営は公的負担を要することが見込まれることから、運営権対価の支払いは要しないものとする。 (大樹町「北海道スペースポート運営事業 実施方針」令和8年4月・9ページ)

逆に、運営権者は「別途町が定める費用負担上限額の範囲内において、町から運営費用相当額の支援を受ける」とあり、大規模修繕・大規模更新は原則として町が実施します。公的負担が不要になった場合は、プロフィットシェアで町に還元する仕組みです。「我が国に例を見ない」は町の文書の自己評価で、種子島・内之浦(JAXA)など他の射場との比較は当サイトでは検証していません。

町が直営する場合と PFI(民間資金等活用事業)で実施する場合の比較は、特定事業の選定(令和8年5月15日)に載っています。

項目特定事業の選定の記述
比較の結論「PSCに比べてPFI-LCCの方が想定事業期間中の町の財政負担額を約1,260万円縮減できることが見込まれる」
事業期間(計算の前提)令和8年10月〜令和23年9月(15年)
割引率(計算の前提)1.084%(15年国債の過去5年平均)
業務の内容① ロケット射場(LC1)運営事業、② 多目的航空公園(LC1を除く)運営事業
対象施設の名称北海道スペースポート(多目的航空公園)

PSC は町が直営したときの財政負担、PFI-LCC は PFI にしたときの事業期間全体の町の負担で、いずれも現在価値に割り引いた比較です。約1,260万円が大きいか小さいかの評価は、当サイトはしません。15年・割引率1.084%という前提だけ添えておきます。

実施方針には、射場の運営ならではの条項もあります。

実施方針の「令和8年10月に供用」から10月1日リリースの「2026年度末」へ、LC1の記述を日付順に並べる

LC1 の供用開始時期は、出典と日付によって書き方が違います。9月26日の記事では町のページ「2025年度」と SPACE COTAN の9月17日「2026年度」を並べましたが、今回は町の実施方針・運営権設定ページ・10月1日のリリースが加わります。

出典日付記述
大樹町「北海道スペースポート(HOSPO)について」更新日 2025-06-02「2025年度完成予定」(9月26日の記事で既出。今日も未更新)
大樹町 実施方針2026年4月「令和8年10月に供用可能となる予定」「供用可能となった後に運営権を設定」
大樹町 運営権設定のページ2026-05-15スケジュール「10月1日 事業開始」
SPACE COTAN サミット開催案内2026-09-17「2026年度にHOSPOの射場『Launch Complex 1(LC1)』が完成すること」(9月26日の記事で開いた出典。今回は再確認していない)
SPACE COTAN 運営開始のリリース2026-10-01「2026年度末の供用開始を予定」

実施方針(4月)の記述は、はじめにの部分と本文で2か所あります。

令和8年10月には、北海道スペースポートの中核となる新たなロケット射場「Launch-Complex1」(以下「LC1」という。)の供用開始が予定されている。 (同・1ページ)

運営権設定対象施設のうち射場(LC1)については、令和8年10月に供用可能となる予定であり、供用可能となった後に運営権を設定し、実施契約を締結することを予定している。 (同・12ページ)

つまり4月の時点では、「LC1 が10月に供用可能になる → その後に運営権を設定して契約」という順番でした。ところが10月1日に運営は始まり、同じ日のリリースは LC1 の供用開始を「2026年度末」に置いています。2つの文書をそのまま読むと、LC1 の供用と運営権の設定の順番が4月の計画どおりではない、ということになります。

ここから先は推定です。LC1 に対する運営権の設定時期や契約の扱いが、4月の計画から変わった可能性があります。確定させるには、9月の町議会に出た議案(運営権設定の議決内容と対象施設の範囲)か、公表されるなら実施契約書を見る必要があります。当サイトは今回どちらも開いていません。

供用時期の差は、「令和8年10月」を2026年10月1日、「2026年度末」を2027年3月31日と読めば、最大で約6か月です。今日(2026年10月5日)から2026年度末までは177日です。LC1 が今日の時点で竣工しているかどうかも、当サイトが開けた資料では確認できません。10月1日のリリースが「供用開始を予定」と未来形で書いていることから、9月26日の記事と同じくまだ竣工していないと推定しています。SPACE COTAN の施設ページは LC1 を「LP11とLP12の2つの射点を有し」と説明していますが、供用時期は書いていません。

SPACE COTAN が9月30日に三井住友海上火災保険と結んだ包括連携協定のリリースには、この先の構想も書かれています。「LC1の整備後は、高頻度打上げが可能な射場Launch Complex 2(LC2)の整備に向けた検討を進めるほか、将来的には大型ロケットや有人ロケット打上げに対応するLaunch Complex X(LCX)や、P2P(高速2地点間輸送)の受け入れに向けて3,000m滑走路の新設も見据えています」。10月1日のリリースの小田切社長のコメントにも「LC1に続くさらなる射場整備も視野に入れながら」とあります。いずれも構想の段階で、時期は書かれていません。当サイトも時期や確度には触れません。

当サイト集計で北海道は7回・軌道投入0回、運営会社の設立後は2回、最終便から1,888日で運営が移った

運営権の対象になった射場で、これまで何回の打ち上げが記録されているかを、当サイトの集計で確かめます。LL2 に登録された北海道スペースポートの打ち上げは、2017年7月30日から2021年7月31日までの7回で、成功3・失敗4です。7回はすべて IST の MOMO、つまり弾道飛行の観測ロケットで、軌道投入試行は0回です。国内4射場の152回のうち軌道投入をめざした便は145回で、差の7回がちょうどこの北海道の7回です。

9月26日の記事では MOMO v0 と v1 で分けましたが、今回は運営会社 SPACE COTAN の設立日(2021年4月20日)を境に分けます。

区分回数成功失敗期間(日本時間)形態
SPACE COTAN 設立前5回142017-07-30〜2020-06-14MOMO v0
SPACE COTAN 設立後2回202021-07-03〜2021-07-31MOMO v1
合計7回342017-07-30〜2021-07-31—

設立前後の境界が重ならないことは、MOMO v0 の最終便(2020年6月13日 20:15 UTC)が設立日より前、MOMO v1 の初便(2021年7月3日 08:45 UTC)が設立日より後であることで確認しました。母数が10未満なので、「成功率」は書きません。設立前は5回中1回が成功、設立後は2回中2回が成功、という形でだけ示します。

LL2 登録分の最終便(2021年7月31日・日本時間17時00分)から数えると、運営が移った10月1日までが1,888日、今日までが1,892日です。計算は、2021年7月31日から2026年7月31日が1,826日、8月31日分と9月30日分と10月1日の1日で62日、そこから今日まで4日です。9月26日の記事の1,883日に9日を足した数と一致します。

数え方最後の便運営移行日(10月1日)まで今日(10月5日)まで
LL2 登録分(当サイトの集計)2021-07-31 MOMO(MOMO v1)1,888日1,892日

この1,888日は集計上の数字で、2025年7月12日の jtSPACE VP01 は入っていません。射場が5年以上止まっていたわけではない点は、9月26日の記事と同じです。当サイトの数字を引くときは「LL2 登録分」の但し書きをつけてください。

当サイトの予定表(16件)では、LC1 から上がる予定の ZERO 初号機は次のとおりで、9月26日から動いていません。

項目予定表の値
名前ZERO | Maiden Flight
打ち上げ時刻(NET)2027-12-31 00:00 UTC
精度年
状態未定(To Be Determined)
射点Launch Complex 1

LL2 が「2027年内」に置いていることと、SPACE COTAN の「2026年度末の供用開始」は矛盾しませんが、当サイトはこれ以上に時期を絞りません。

次に見るもの、9月議会の議案の中身とLC1の竣工リリース

今回の材料で確定していないのは、次の2点です。

竣工や議案の中身が確認できたら、この記事に更新日を付けて追記します。9月26日の記事に載せた町のページ(更新日2025年6月2日)の「2025年度完成予定」は、今日の時点でも更新されていません。