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イプシロンS実証機は内之浦で3段まで結合、搭載は約400kgの性能確認用

・打ち上げ日和 編集部 ・約16分で読めます

JAXAは10月16日の文科省部会で、イプシロンS実証機が内之浦で3段まで結合され全段点検中と報告した。第2段モータ試験は「良好」、搭載は約400kgの性能確認用で、打ち上げ日は未定。内之浦の空白は1,481日。

宇宙・ロケット産業を追っている人むけ。数字と一次情報で書いています。

山あいに広がる内之浦宇宙空間観測所を高台から見下ろした風景
内之浦宇宙空間観測所(2015年・星ヶ丘から撮影)。実証機の射場作業が進む2026年の写真ではないIppukucho / CC BY 3.0 / 出典

JAXAは2026年10月16日、文部科学省の宇宙開発利用部会(第109回)で、イプシロンSロケットBlock1の開発状況を報告しました。資料109-1「イプシロンSロケットの開発状況について」は、宇宙輸送技術部門理事の岡田匡史とイプシロンプロジェクトチーム プロジェクトマネージャの井元隆行の名義で、全19ページです。

当サイトは9月22日の記事で、イプシロンS Block1について「まだ公表されていないこと」を2つ挙げました。7月23日に行った第2段モータM-35aの地上燃焼試験の正式な結果と、実証機に載せる衛星です。この2点が、10月16日の資料で埋まりました。本稿はその続報です。あわせて、機体がいま内之浦のどの工程にあるか、M-35を積んだイプシロンの実績、そして当サイトの予定表の表示がJAXA資料とどうずれているかを並べます。

上の写真は内之浦宇宙空間観測所で、2015年の撮影です。資料に出てくるM組立室やM整備塔で実証機の結合が進んでいる2026年の姿ではありません。当サイトの画像プールにイプシロンや整備塔の近景はありません。

10月16日、JAXAは文科省部会でイプシロンSの進み具合を報告した

部会は2026年10月16日(金)15時から17時までで、議題は2つ、配付資料は資料109-0から109-3までの4点でした。議題1がイプシロンSです。資料109-1の2ページ目は、前回の報告からの経緯をこう書いています。

令和8(2026)年2月4日、第102回宇宙開発利用部会にて2段モータとしてM-35aを適用するイプシロンSロケットBlock1開発着手、M-35a地上燃焼試験計画、およびE-21燃焼異常原因調査状況をご報告した。 (文部科学省 宇宙開発利用部会 第109回 資料109-1)

本日は、イプシロンSロケットBlock1開発状況(M-35a地上燃焼試験結果およびフェアリング分離放てき試験結果)と実証機の状況、およびE-21燃焼異常原因調査状況の進捗についてご報告する。 (同)

全体状況のページの1行目は「2026年度の実証機打上げに向けて計画通り実施中。」です。工程表には2026年度内に「Y-0リハーサル」と「実証機打上げ」のマイルストーンが置かれていますが、月は書かれていません。前回の2月4日から今回の10月16日までは254日です。

同じ10月16日の朝には、内閣府の宇宙輸送小委員会(第12回)も開かれています。そこへJAXAが出した資料1-4「現基幹ロケットの状況と今後について」は、イプシロンについて1文だけ、位置づけを書いています。

イプシロンロケットは地上燃焼試験における燃焼異常を受け、実績のある2段を適用した形態(Block1)で早期打上げ再開を目指している。 (内閣府 宇宙輸送小委員会 第12回 資料1-4)

なお、JAXAのプレスリリース一覧2026年には、2026年11月1日に見た範囲で、この10月16日の部会報告に対応する項目がありません。一覧に載っている部会報告は8月26日・7月23日・7月6日・4月13日・3月24日・2月25日・2月4日・1月20日の分で、10月の項目は1日・6日・14日・18日・20日・21日だけです。今回の内容は、文部科学省の配付資料ページから読む形になります。

9月に「未公表」だった2点が埋まった:M-35a試験は「良好」、荷物は約400kgの性能確認用

M-35a地上燃焼試験の結果

7月23日の試験について、資料は次のように書いています。

2026年7月23日(木)に試験を実施。試験データ評価と供試体点検を実施し、強化型2段モータであるM-35に対して部品枯渇を反映したM-35aの機能・性能が良好であることを確認した。 (資料109-1)

M-35aの燃焼圧力は、下図の通り、強化型のM-35と同等であった。 (同)

試験後の供試体を点検した結果、インシュレーション焼損量もM-35と同等であった。 (同)

比較の相手であるM-35は、資料の注記に「M-35は2号機〜6号機に適用」とあるとおり、イプシロンの2号機から6号機まで飛んだ第2段モータです。M-35aはその部品枯渇を反映した、つまり作れなくなった部品を置き換えたモータで、試験の目的は「M-35と同じに振る舞うか」の確認でした。試験の諸元は参考ページにまとまっています。

項目資料109-1 参考-1の記載
試験場所種子島宇宙センター竹崎地上燃焼試験場
実施日2026年7月23日
燃焼時間約130秒
供試体短ノズル型
計測項目約250点(E-21の種子島地上燃焼試験は約240点)
推進薬量約15トン
直径2.5m
全長実機 約4.3m/試験 約3.2m
真空中推力実機 約470kN/試験 約400kN
比推力実機 約295秒/試験 約268秒

試験供試体はノズルを短くした形なので、推力と比推力は実機より低い値になっています。資料がそう書き分けているため、当サイトも「試験で約400kN出た」を実機の推力とは読みません。

7月23日の試験から10月16日の報告までは85日、今日までは101日です。9月22日の記事を書いた時点で61日が過ぎていた「正式な結果」が、ここで出たことになります。

フェアリング分離放てき試験

もう1つの試験は9月11日です。

2026年9月11日(金)に、信頼性向上の取り組みとして実機大供試体を用いたフェアリング分離放てき試験を実施。 (資料109-1)

試験データを良好に取得、フェアリング分離・放てき性能が良好であることを確認。 (同)

この試験は9月22日の記事の時点で当サイトが把握していなかったもので、今回の資料で初めて日付と結果を確認しました。

実証機のペイロード

搭載物は、衛星ではなく「性能確認を目的としたペイロード」です。資料の表を転記します。

項目資料109-1の記載
打上げ目的Block1総合システム性能確認/衛星レーザ測距(SLR)軌道上技術実証
質量約400kg
外寸法直径約2m
投入軌道太陽同期軌道(SSO) 高度約500km
分離時姿勢低スピンレート
軌道上運用数年(太陽活動状況による)
搭載しないもの姿勢制御系・電源系・推進薬
図の注記SLR反射器(Mt.FUJI)20式

「性能確認」の中身は、注記で「太陽同期軌道(SSO)の性能(打上げ能力、軌道投入精度含む)」と定義されています。分離後は衛星レーザ測距(地上からレーザを当てて往復時間から位置を測る方法)で軌道と姿勢を高精度に決める技術実証ができる仕様です。姿勢制御系も電源系も推進薬も積まないので、能動的に動く衛星ではありません。ペイロードの固有名は資料のどこにも書かれていません。

なぜ衛星を載せないかについて、資料は根拠を1つ示しています。

イプシロンロケット6号機及びH3ロケット試験機1号機の打上げ失敗等を踏まえた「マネジメント改革検討委員会報告書」で設定した新規開発ロケットへの衛星搭載の考え方による(宇宙開発利用部会 第86回(2024.4.23)にて報告) (資料109-1)

2月4日の資料が「システム刷新相当の機体であることを踏まえつつ、具体化を進める」と書いていた搭載物は、この形で具体化されました。

機体は内之浦で3段まで結合、いまは全段点検、フライト用2段モータは製造中

実証機の現在地は、資料9ページのフロー図に矢印で示されています。「工場試験実施後、射場作業を実施中。」とあり、済んだ工程と残る工程はこうです。

工程作業場所(資料の記載)10月16日時点
1段射座据付(1段VOS)M組立室・M整備塔済
1段/2段結合(2段VOS)同済
2段/3段結合(3段VOS)同済
全段点検同現時点
衛星フェアリング結合同残
特殊試験同残
Y-0リハーサル同残
打上げ—残

10ページと11ページには「内之浦での水切り」「M組立室搬入」「1段VOS」「2段VOS」「3段VOS」の写真が載っています。機体はすでに内之浦に運ばれ、1段から3段まで積み上がった状態です。

ここで注意が要るのは、2段モータの扱いです。フロー図の注記はこう書いています。

Y-0リハーサルには2段モータフライト相当品を適用(フライト用2段モータ製造中のため)、Y-0リハーサル後にフライト用に組み換え (資料109-1)

いま機体に組まれている2段は、飛ぶ本物ではなく「フライト相当品」です。Y-0リハーサル(打ち上げ当日と同じ手順を射場設備と組み合わせて通す予行)はそれで行い、終わってから製造中のフライト用に組み換えます。つまり残る工程は、全段点検、フェアリング結合、特殊試験、Y-0リハーサル、2段の組み換え、打ち上げの順です。まとめのページも「今後、ロケットシステムと射場施設設備システムを組み合わせたY-0リハーサルを実施する。」と書いています。

2026年度の残りは、今日から2027年3月31日までの150日です。この150日のあいだにどの工程をいつ行うかは、資料に書かれていません。当サイトも月を書きません。

M-35を積んだイプシロンは5回中成功4、内之浦の空白は1,481日に

ここから当サイトの集計です。

M-35の飛行実績

M-35aが「同等」の相手に選んだM-35は、イプシロンの2号機から6号機まで5回飛んでいます。LL2のイプシロン6回(成功5・失敗1、2013年9月14日〜2022年10月12日)から1号機を除くと、5回中成功4・失敗1(2016〜2022年)です。

区分回数成功失敗期間(日本時間)
イプシロン 全便6512013-09-14 〜 2022-10-12
うちM-35を積んだ便(2〜6号機)5412016年〜2022年

失敗1件は2022年10月12日の6号機です。LL2が記録している失敗理由は原文でこうなっています。

Flight Termination System activated at T+06:28 after rocket was observed not in correct attitude for normal 2nd/3rd stage separation. (The Space Devs Launch Library 2・当サイトの2026年10月22日取得分)

当サイトの訳では「2段/3段の正常な分離に必要な姿勢になっていないことが確認され、打ち上げ後6分28秒に飛行中断システムが作動した」です。LL2の記述は分離前の姿勢の異常を指していて、第2段モータの燃焼そのものを失敗の理由にはしていません。ただしこれはLL2の短い記述の範囲で、JAXAの原因報告の読み替えではありません。「M-35は6号機の失敗と無関係だった」とまでは当サイトは書きません。

内之浦の空白

内之浦から最後に上がった衛星打ち上げロケットは、この2022年10月12日のイプシロン6号機です。そこから今日(2026年11月1日)までが1,481日になりました。9月22日の記事で1,441日だった数字が40日進んでいます。

起点終点日数
2022-10-12(イプシロン6号機)2026-11-01(今日)1,481日
2022-10-122027-03-31(2026年度末)1,631日
2026-11-012027-03-31150日

9月22日の記事に書いたとおり、内之浦の便どうしの間隔で史上1位は、2006年9月のM-V最終便から2013年9月のイプシロン1号機までの2,548日です。年度末に上がったとしても1,631日で、2番目のままです。

2026年に国内4射場から上がった便は4回(10月19日まで・成功3・失敗1)で、内之浦からは0回です。この4回に内之浦が入っていないのは、LL2の内之浦の最終便が2022年10月12日のままであることから分かります。

射場の側の数字

内閣府資料1-1の10ページ「我が国の主な射場の現状・課題」は、内之浦と種子島をこう並べています。

射場射点組立棟打上げ実績
内之浦宇宙空間観測所22最大年2回
種子島宇宙センターH3射点 11(改修予定)最大年6回(H-IIA)

注記は「※打上げ実績は人工衛星の軌道投入用ロケットのみ集計」です。当サイトの内之浦43回も軌道投入機だけなので、母数の性質は近いですが、内閣府の「最大年2回」がどの年を指すかは資料に書かれていません。当サイトは年別の内之浦の回数を便ごとには持っていないため、ここでは照合しません。

同じページは、2つの射場の関係を1文で書いています。

一部の設備等を共有しており、同時打上げ不可 (内閣府 宇宙輸送小委員会 第12回 資料1-1)

この記述がイプシロンS実証機とH3の次便の順番にどう効くかは、資料に書かれていません。当サイトも推測しません。

決まっていないこと:打ち上げ日、搭載名、LOTUSat-1の行き先

打ち上げ日

JAXAが言っているのは「2026年度」までです。JAXAの「打上げ予定」ページは2026年11月1日時点で「2026年6月12日現在」のままで、イプシロンSの行はありません。肝付町の「これまでのロケット打上げ一覧」も2026年7月16日の更新のままで、実証機の予定は載っていません。最新の行は2025年7月15日の観測ロケットS-310-46号機(通算418機目)です。

内閣府資料1-1の8ページには、宇宙基本計画工程表(2025年12月)から抜粋した打上げスケジュールが載っていて、その注記はこうです。

イプシロンSロケット実証機の打上げ時期については、第2段モータの再燃焼試験の結果に対する原因究明の状況を踏まえた飛行計画見直しの中で今後調整。 (内閣府 宇宙輸送小委員会 第12回 資料1-1、工程表の注記)

これは2025年12月時点の工程表の文言で、10月16日の文科省資料「2026年度の実証機打上げに向けて計画通り実施中」より前のものです。2つの資料が同じ日に出ていますが、工程表の側はまだ古い文言を引いています。

E-21の原因調査

Block1がM-35aを使う理由になった、本来の第2段モータE-21の燃焼異常については、資料12ページから15ページに調査の進捗があります。サブサイズモータ(実機より小さい試験用モータ)の燃焼試験は、2月4日の報告以前に第1シリーズ(A〜C)、今回までに第2シリーズ(D〜F)の計6回が行われました。

推進薬に接着しているブーツフラップの一部を削除した試験であるⒻで、燃焼異常発生時と同様の「燃焼圧力の乖離が高い側に徐々に拡大」が発生した。 (資料109-1)

これまでの結果から「ブーツフラップ破孔」が要因である可能性が高いと考えており (同)

今後はサブサイズの第3シリーズ(G〜I)の3回を実施するとし、原因特定の最終確認としての「実機大モータ燃焼試験」は「検討中」です。対策として「推進薬形状、ブーツフラップ板厚、リリーフブーツ隙間等の変更検討」を挙げています。資料の言い方は「可能性が高いと考えており」「検討中」で、原因が確定したとは書かれていません。当サイトも確定とは書きません。

当サイトの予定表に載る「LOTUSat-1」

当サイトの打ち上げ予定(2026年11月1日4時47分・日本時間に取得した15件)で、内之浦の射点(Mu Center)に入っている便は2件です。

便(予定表の表示名)予定日付の精度状態
Epsilon S|JV-LOTUSat-12026年年未定
Epsilon S|SOLAR-C2028年11月月未定

1件目の「JV-LOTUSat-1」はLL2の登録で、2026年11月1日に確認したそのレコードの最終更新は2025年9月15日、ペイロードの配列は空です。一方、JAXAが10月16日に示した実証機の搭載物は、名前の無い約400kgの性能確認用ペイロードで、資料のどこにもLOTUSat-1は出てきません。

ここで言えるのは、当サイトの予定表の表示名と、JAXAが示した実証機の搭載物が一致していないということまでです。「実証機にLOTUSat-1は載らない」とは、LL2のレコードが更新されるか、JAXAかNECがLOTUSat-1の打ち上げ手段を公表するまで、当サイトは書きません。LL2の2026年の1件が実証機を指しているのか、別の便を指しているのかも、LL2の側の記述からは決められません。

10月29日の記事で書いたとおり、予定15件はすべて状態が「未定」で、日付まで決まった国内の便は11月1日時点でも1件もありません。イプシロンSを宇宙研の小型計画の頻度の中でどう位置づけるかは、10月7日の記事に書きました。

今日は言えないこと

次に動くとすれば、JAXAの打ち上げ日のプレスリリース、LL2の「Epsilon S | JV-LOTUSat-1」レコードの更新、JAXA「打上げ予定」ページの更新のどれかです。どれかが動いたら、1,481日という数字と一緒に更新します。