くわしく 解説 ひので 内之浦 M-V 宇宙研 SOLAR-C 太陽観測 データ

「ひので」の運用延長提案は2033年度まで、上げた便は内之浦43回の35回目

・打ち上げ日和 編集部 ・約11分で読めます

宇宙研が10月27日に出した記事に、太陽観測衛星「ひので」の直近の運用延長提案は2024年度から2033年度までと書かれていた。2006年にこの衛星を上げた便は、当サイト集計で内之浦43回のうち35回目にあたる。

宇宙・ロケット産業を追っている人むけ。数字と一次情報で書いています。

山あいに広がる内之浦宇宙空間観測所を高台から見下ろした風景
内之浦宇宙空間観測所(2015年・星ヶ丘から撮影)。「ひので」が上がったのはこの9年前で、打ち上げ当時の写真ではないIppukucho / CC BY 3.0 / 出典

JAXA宇宙科学研究所(宇宙研)は2026年10月27日、連載「宇宙科学最前線」に「二十歳を迎えた「ひので」」を出しました。書いたのは太陽系科学研究系 准教授の坂尾太郎で、ISASニュース2026年10月号(No.547)に載った記事のウェブ版です。

太陽観測衛星「ひので」(SOLAR-B)が2006年9月23日にM-Vロケット7号機で内之浦から上がり、それがM-Vシリーズ最後の打ち上げだったことは、当サイトも10月28日の記事で書きました。本稿はその言い直しではありません。今回の記事が新しく出したのは、この衛星を「いつまで」動かす前提で審査を受けたかという情報です。あわせて、当サイトがまだ使っていなかった内之浦43回の内訳——この便が何回目で、その後に何回上がったか——を並べます。

上の写真は内之浦宇宙空間観測所です。2015年の撮影で、「ひので」が上がった2006年より9年あとの姿です。打ち上げ当時の写真ではなく、「ひので」本体や太陽の観測画像でもありません。当サイトの画像プールにM-V・「ひので」・太陽観測の写真はありません。

10月27日の記事が書いた、運用期間の終端は2033年度

記事のなかで、打ち上げ側から見ていちばん新しいのはこの1文です。

2023年度に行った直近の運用延長提案では、新たな延長期間を2024年度から2033年度までとし(2033年度中に運用終了)、この運用期間に対する審査を受けました。 (JAXA宇宙科学研究所「宇宙科学最前線」2026年10月27日)

読み方を間違えないよう、この文が言っていないことを先に書きます。ここで書かれているのは「提案した期間」と「その期間に対して審査を受けた」ことで、2033年度に運用を終えることが確定した、という話ではありません。 当サイトは「2033年度まで運用される」とは書きません。記事にも審査の結果は書かれていません。

そのうえで、提案された終端を打ち上げからの時間に直すと大きさが分かります。2006年9月23日から2033年度の末(2034年3月31日)までは 10,051日で、約27.5年です。参考に、同じ数え方で打ち上げから2026年10月31日までは 7,343日(約20.1年)です。提案どおり動いたとすれば、残りはこれまで来た道の3分の1強にあたります。

宇宙研のミッションページに載る「ひので」の諸元は次のとおりで、区分は「運用中」です。

項目宇宙研ミッションページの記載
打上げ日時2006年9月23日 6時36分
打上げロケットM-Vロケット7号機
打上げ場所内之浦宇宙空間観測所
軌道高度約680km
軌道傾斜角98度
軌道種類円軌道(太陽同期)
軌道周期98分
質量900kg
主な機器口径50cmの可視光磁場望遠鏡(SOT)

延長審査の形が変わった:3年刻みから「いつやめるか」を示す方式へ

同じ記事には、審査そのものの歴史も書かれています。「ひので」が最初に運用延長審査を受けたのは 2010年度です。初期は毎回3年程度を目安とした延長提案を求められていたのに対し、最近は最大限いつまで運用するのか(いつ運用をやめるのか)を示して、そこまでの期間に対する延長提案を求められるようになった、という説明です。

つまり2023年度の「2033年度まで」という提案は、運用を10年延ばしたいという要求というより、求められる提案の形が変わった結果として出てきた終端として読めます。3年ずつ更新する方式なら、2033年度という数字はそもそも書類に出てきません。ここは宇宙科学衛星の延長運用を追うときの見方そのものに関わるので、記事の記述を引く形で残しておきます。

なお当サイトは、この審査の形の変化が宇宙研の他のミッションにも同じように適用されているかどうかは確認していません。今日書けるのは「ひので」1機について記事に書かれている範囲です。

2033年という終端の理由は、太陽活動11年周期の2サイクル分

なぜ2033年度なのかも、記事に書かれています。太陽の極域磁場が最大となる次の活動極小期は 2031年を中心とした前後1年程度と予想されていて、打ち上げ後の最初の極小期(2008年12月)から11年の活動周期2サイクル分の長期データを取得することが目的だという説明です。2008年から2031年までを収めると、提案の終端が2030年代前半に来る——という組み立てになります。

20年のあいだに積み上がったものも、記事は数字で書いています。「ひので」を用いた査読論文は今年の8月の時点で1900編を超えており、近年も毎年50編以上が出版され続けているとあります。「近年」が何年から何年を指すかは原文に書かれていないので、当サイトも年の範囲を補いません。総数を年数で割って「年あたり何編」という数字を作ることもしません。

機器と国際協力の分担は次のとおりです。

機器分担(記事の記載)
可視光磁場望遠鏡 SOT日米
X線望遠鏡 XRT日米
極端紫外線撮像分光装置 EIS日米英

搭載機器は3台で、関わる機関はJAXA(日本)・NASA(米国)・STFC(英国)です。打ち上げ後にはESAが地上データ受信局の提供で支援・協力に加わったと書かれています。観測計画は機器ごとにChief Observer(CO)1名が金曜を始まりとする一週間を担当し、SOTとXRTは日米で半々、EISは日米欧の三者で分担、3機器をまとめるChief Planner(CP)が立つ体制で、これは打ち上げ当初から変わっていないとあります。

他の望遠鏡との関係も記事にあります。「ひので」の発見が米国のIRISミッション(NASAのSMEX、2013年打上げ)の創出に直結し、以後「ひので」とIRISは太陽面上の同じ領域を共同観測する体制にあること。そして2029年以降、Solar Orbiterの軌道傾斜角が33度に達して極域を高緯度から見られるようになるため、「ひので」の極域磁場・X線ジェット観測との共同観測を予定していること。提案の終端が2033年度であることと、2029年以降・2031年前後という時期の並びは、ここでつながります。

この便は内之浦43回のうち35回目、以後20年で上がったのは8回

ここから当サイトの集計です。内之浦宇宙空間観測所からの打ち上げは43回(成功33・失敗10、1966年9月26日〜2022年10月12日)で、機体ファミリー別の内訳はラムダ4S 5・ミュー系30・イプシロン6・S-Series(SS-520)2です。この表そのものは10月28日の記事に出しました。

「ひので」の便はミュー系の最終便なので、ラムダ4S 5回とミュー系30回を足した 35回目にあたります。43回のうち35回目、割合にすると81.4%の時点です。残る8回(イプシロン6回とSS-520の2回)は、すべて「ひので」より後に上がりました。

区間回数期間(日本時間)日数1回あたり(単純平均)
1回目〜「ひので」の便(35回目)351966-09-26 〜 2006-09-2314,607日(約40.0年)417日
「ひので」より後82006-09-23 〜 2026-10-317,343日(約20.1年)918日
合計431966-09-26 〜 2026-10-3121,950日—

母数は43回(1966年9月26日〜2022年10月12日の実績)、終点を今日に置いた期間の数字です。「1回あたり」は日数を回数で割った単純平均で、間隔の中央値でも計画上の頻度でもありません。後半の7,343日には、2022年10月12日以降の、1回も上がっていない期間が含まれています。

言い方を変えると、内之浦はこの衛星が上がる前の40年で35回、上がった後の20年で8回です。「ひので」は、自分を上げた射場が頻度を落としていくあいだ、ずっと動き続けてきた衛星ということになります。打ち上げ機体の側でも、M-Vは7回中成功6・失敗1(1997年2月12日〜2006年9月23日)で、この7号機を最後に飛んでいません。

後継SOLAR-Cは同じ内之浦の射点に、2028年11月・月までの精度で

記事は「ひので」の分光診断能力がSOLAR-Cへと発展的に受け継がれますと書いています。そのSOLAR-Cが当サイトの打ち上げ予定表でどう載っているかを置きます。

2026年10月31日4時47分(日本時間)に保存した予定15件のうち、内之浦の射点(Mu Center)に入っているのは2件です。

便予定日付の精度状態
イプシロンS|JV-LOTUSat-12026年年未定
イプシロンS|SOLAR-C2028年11月月未定

15件はすべて状態が「未定(To Be Determined)」です。SOLAR-Cは月までの精度しか決まっておらず、日付ではありません。射場についても、当サイトの予定表が持っているのは射点の名前(Mu Center)で、ここから内之浦と読むのは当サイトの推定です。イプシロンSの現在地と、宇宙研のロードマップが小型計画に置いている頻度は10月7日の記事に書きました。

そして内之浦からの衛星ロケットは、2022年10月12日のイプシロン6号機を最後に上がっていません。この空白そのものを日数で見る話は9月22日の記事に譲ります。本稿で言えるのは、「ひので」の運用延長提案の終端(2033年度)と、後継機の予定(2028年11月・月の精度)が、どちらもまだ日付になっていない時間の中に置かれている、ということです。

今日は言えないこと

次に見るものは2つあります。1つは、宇宙研の発表に「ひので」の運用延長審査の結果や、2031年前後の極小期に向けた観測計画の具体が出るかどうか。もう1つは、イプシロンSの日程が年・月の精度から日付に変わるかどうかです。