火星衛星探査機MMXを載せたH3ロケット10号機の打ち上げは、2026年10月20日4時41分03秒に設定されています。予備期間は10月21日から11月7日まで。
では「10月20日にそのまま上がる確率」はどれくらいか。その数字は、いまのこのサイトには出せません。なぜ出せないのかと、そのうえで何なら言えるのかを書きます。
出せない理由:延期の記録を誰も持っていない
「予定どおり上がる確率」を出すには、過去の打ち上げについて「最初に発表された日」と「実際に上がった日」の対応表が要ります。ところが、これがどこにもまとまっていません。
打ち上げ予定APIが返すのはいまの予定であって、その予定が過去に何回動いたかの履歴ではありません。JAXAの発表も、動いたときは新しい日付が出るだけで、「何日ずれたか」の一覧にはなっていません。
つまり延期率を出すには、予定を毎日記録して、動いた瞬間を捉えつづける必要があります。分母を持っていない状態で「だいたい7割くらいでしょう」と書くのは、根拠のある推定ではなくただの印象です。だから書きません。
このサイトは打ち上げ予定を1時間ごとに取得しています。日程の変化を残す仕組みを整えれば、1〜2年後には国内の打ち上げについて実測の延期率を出せるようになります。それまでは「無い」と言い続けます。
そのうえで言えること1:確度が最上位まで来ている
打ち上げ予定には「日時がどこまで確定しているか」の段階があります。年内としか決まっていないもの、月まで、日まで、そして秒まで。MMXは秒まで確定していて、ステータスも Go for Launch です。
これは軽い意味ではありません。国内の今後の予定11件のうち、秒まで確定しているのはMMXの1件だけです。残り10件は「2026年内」「2028年第1四半期」といった粒度で、宿を押さえる段階にすらありません。
秒単位の日時が公表されるのは、機体と地上設備の準備が最終段階に入り、軌道計算まで固まった段階です。この段階から「打ち上げ自体が数か月飛ぶ」ことは、経験的にはまれです。
そのうえで言えること2:19日間の予備期間の意味
JAXAは予備期間として10月21日〜11月7日、つまり19日間を確保しています。これは「20日に上がらなくても、そのあと19日ぶんの機会がある」という意味です。
MMXは火星に向かう探査機なので、地球と火星の位置関係で打ち上げられる期間が決まります。19日という長さは、その窓のなかで取れるだけ取ってあると読めます。
ここから言えるのは次のことです。「10月20日に上がるか」と「10月中〜11月上旬に上がるか」は、まったく違う問いです。前者は天候ひとつで簡単にずれます。後者はもっと堅い。カレンダーを押さえるなら、後者の幅で考えるほうが実態に合います。
そのうえで言えること3:H3の実績は9回しかない
H3の打ち上げ実績は9回、うち成功7回・失敗2回です。9件という母数で「成功率78%」と書くのは、数字としては正しくても意思決定には使いにくい。95%信頼区間は40%台から90%台まで広がり、ほとんど何も絞れていないからです。
より意味があるのは中身のほうです。2023年3月の初号機失敗(第2段の電気系)、2025年12月のみちびき5号機の失敗(第2段2回目の燃焼が継続せず)——どちらも第2段まわりで、直近2便(2026年6月・8月)は成功しています。
MMXのH3-24形態は、固体ロケットブースタを4本束ねた最も推力の大きい構成です。この形態での実績は2025年10月のHTV-X1の1回だけで、その1回は成功しています。1件を根拠に何かを言うことはできません。
予測として書けること
以上をまとめると、いま責任を持って書けるのはここまでです。
- 10月20日そのものは動きうる。 秒まで確定してもなお、天候と機体の状態で日付は動く。動いた場合の受け皿として19日間が用意されている。
- 「10月20日〜11月7日のあいだに上がる」ほうが、日付ピンポイントよりはるかに確度が高い。 旅程を組むならこちらの幅で。
- 「予定どおり上がる確率◯%」は、いまのデータでは誰も出せない。 出している記事があれば、その分母がどこから来たのかを確かめたほうがいい。
日程が動いたら、このサイトは変化そのものを記録します。次に同じ問いが来たときには、印象ではなく分母のある数字で答えられるようにするためです。