くわしく ふりかえり みちびき H3 延期 記録 種子島

みちびき7号機は191日おくれて上がった

打ち上げ日和 編集部 約6分で読めます

当初の打ち上げ予定は2026年2月1日、実際に上がったのは8月11日でした。その間にJAXAが出した日程関連の発表は8本あります。1便の日程がどう動いたかを、発表をすべてたどって記録します。

宇宙・ロケット産業を追っている人むけ。数字と一次情報で書いています。

種子島宇宙センター吉信第2射点。射点の構造物と2本の避雷塔が海を背に立っている
種子島宇宙センター 吉信第2射点(LP-2)。H3ロケットはここから上がる(2005年撮影)Naritama (NARITA Masahiro) / CC BY-SA 3.0出典

みちびき7号機を載せたH3ロケットは、2026年8月11日に種子島から上がりました。この便の当初の打ち上げ予定日は、2026年2月1日です。

9月5日の記事で、このサイトは「打ち上げの延期率を出せない、なぜなら分母を誰も持っていないから」と書きました。分母をつくるには、1便ずつ「最初に発表された日」と「実際に上がった日」を突き合わせて記録するしかありません。これはその1件目です。

当初は2026年2月1日だった

最初の発表は2026年1月7日です。この時点でJAXAは、2月1日に予定していた打ち上げを延期すると告げています。理由は逐語でこう書かれています。

H3ロケット8号機打上げ失敗に関する原因究明及び後続号機への影響評価を行う必要があることから

つまり、この便そのものに不具合が見つかったのではなく、別の号機の失敗が起点です。原因究明の中身にはこの記事では踏み込みません。ここで記録するのは「日程がどう動いたか」だけです。

続く2月3日の発表では、当初設定していた打上げ予備期間である2026年3月31日までの打ち上げは実施しない、と明示されました。この時点で、次の打ち上げ日は未定になっています。

日程に関する発表は8本、結果を含めて9本

日付発表の内容
2026-01-072月1日の打ち上げを延期。理由は8号機の原因究明と後続号機への影響評価
2026-02-03延期(その2)。3月31日までの予備期間中には打ち上げないと明示
2026-06-15打ち上げ日を再設定=8月7日(金)4:30〜6:00。予備期間 8月8日〜8月31日
2026-07-08予備期間を9月3日〜9月30日まで追加
2026-08-03延期。台風13号による打ち上げ当日の天候悪化の予想
2026-08-07打ち上げ日を再設定=8月10日(月)4:00〜5:30
2026-08-08打ち上げ日を再設定=8月11日(火)。打ち上げ当日の気象条件が整わないため
2026-08-09打ち上げ時刻を4時23分31秒に確定
2026-08-11打ち上げ実施(結果の発表)

日程に関する発表が8本、結果の発表が1本で、合計9本です。1便の日程を追いかけるには、この9本を全部開くしかありませんでした。どこにも一覧は存在しません。それがこの記事を書いた理由です。

191日のうち187日は「別の号機の失敗」が理由だった

内訳を見ると、191日は性質のまったく違う2つの区間に割れます。

区間日数何が起きていたか
2026-02-01 → 2026-08-07187日H3ロケット8号機の失敗に関する原因究明と、後続号機への影響評価
2026-08-07 → 2026-08-114日台風13号、および打ち上げ当日の気象条件
合計191日

同じ「延期」という言葉で呼ばれていますが、桁が2つ違います。187日は、機体を上げるかどうか以前に「上げてよいか」を確かめる作業の時間です。4日は、上げる準備ができた機体が天候を待った時間です。

旅程を組む立場からは、この区別が実務的に効きます。前者は数か月前から分かる(そもそも打ち上げ日が発表されない)のに対し、後者は宿と交通を押さえたあとに起きます。

気象で動いたのは最後の4日だけ

6月15日の発表で打ち上げ日は8月7日に再設定され、7月8日には予備期間が9月30日まで伸ばされました。ここまでは日程が前へ進んでいます。

そこから先の動きは短い間隔で連続します。8月3日に台風13号を理由に延期、8月7日に8月10日へ再設定、8月8日に8月11日へ再設定、8月9日に時刻を4時23分31秒に確定、そして8月11日に実施。発表4本ぶんの動きが、9日間に収まっています。

打ち上げ結果の発表では、分離までの経過が逐語でこう書かれています。

打上げから約29分4秒後に「みちびき7号機」を正常に分離し、所定の軌道に投入

その後、内閣府は2026年8月22日に、みちびき7号機が準静止軌道(東経約184.5度・高度約36,000km)に入ったことを告知しています。

この1件は延期率の分母にならない

ここから先は、書けないことの話です。

「延期率は◯%」とは書けません。 母数が1便だからです。1件の記録は、率の分子にも分母にもなり得ますが、それ自体は率ではありません。この記事に「率」という語を使わないのは、そのためです。

「MMXでも同じことが起きる」とも書けません。 MMXの打ち上げについてこの種の予告をした公式文書はありません。みちびき7号機で起きたことは、みちびき7号機で起きたことです。

「H3は延期しやすい/しにくい」とも書けません。 1便から機体の性質は言えません。参考までに、このサイトが集計している国内4射場の記録では、機体形態ごとの母数はこうなっています。

機体形態打ち上げ成功失敗期間
H3-22(みちびき7号機と同じ形態)7回522023年3月〜2026年8月
H3-24(MMXと同じ形態)1回102025年10月
H3ファミリー全体9回722023年3月〜2026年8月

出典は The Space Devs Launch Library 2 に登録されている国内4射場の打ち上げで、集計は2026年9月7日時点です。なお、この表は打ち上げの成否の母数であって、日程が動いたかどうかの母数ではありません。両者は別の話です。

ちなみに2026年の国内打ち上げは、3月5日から8月11日(日本時間)までで3回(成功2・失敗1)です。年に数回しかない対象について、率を語るには何年ぶんの記録が要るのか——それも含めて、まだ答えを持っていません。

記録を残す側として何をするか

このサイトは打ち上げ予定を1時間ごとに取得しています。取得しているのはそのときの予定であって、予定が動いた履歴ではありません。今回の191日を再構成できたのは、JAXAが発表を消さずに残していたからです。

必要なのは、予定が変わった瞬間をこちら側で残すことです。1便ごとに「最初に発表された日」「動いた回数」「最終的な日付」「動いた理由の区分(原因究明・気象・機体・その他)」を積む。それが数十件たまって初めて、分母のある数字になります。

みちびき7号機は、その1件目です。次はMMXになります。10月20日の予定がそのまま実施されるのか、動くのか、動くとしたらどの区分なのか。動いても動かなくても、この形で記録します。