くわしく データ JAXA 宇宙研 RV-X RVT 再使用ロケット 能代ロケット実験場 CRAFT CALLISTO 集計

再使用機RV-Xの飛行はRVT-9から8,289日、その間に国内4射場から82回

・打ち上げ日和 編集部 ・約15分で読めます

JAXAの再使用実験機RV-Xの7月11日の飛行を宇宙研が10月26日のISASニュースで報告。2003年のRVT-9の飛行から8,289日、その間に国内4射場からは82回上がった。能代の飛行は当サイトの153回に入らない。

宇宙・ロケット産業を追っている人むけ。数字と一次情報で書いています。

種子島宇宙センターから上昇するH3ロケット。機体の下に白い噴煙の柱が伸びている
種子島宇宙センターから上昇するH3ロケット(2025年2月)。写っているのは使い捨てのH3で、再使用実験機RV-Xではない。RV-Xの飛行は秋田県の能代ロケット実験場で行われ、当サイトに写真は無いU.S. Air Force photo by Senior Airman Jacob Wood / パブリックドメイン / 出典

宇宙科学研究所(宇宙研)は2026年10月26日発行のISASニュース10月号(No.547)で、JAXAの再使用ロケット実験機RV-Xが7月11日に能代ロケット実験場で行った飛行試験を、表紙の写真と4ページの記事で報告しました。飛行そのものは10月15日の記事の中で、約40秒・高度約11m・水平約16m・飛行試験シリーズ終了まで書いています。本稿はその言い直しではありません。

今回の主題は、空白の長さと、その間に国内で何回ロケットが上がったかです。比べる相手は、2003年10月31日に高度42mまで飛んだJAXAの再使用ロケット実験機RVT(RVT-9の4回目)です。そこからRV-Xの7月11日までは8,289日です。JAXAの再使用機の飛行がRVT-9以来であることは報道(sorae)の記述で、一次資料では確認していません。そのあいだに、当サイトが集計している国内4射場(種子島・内之浦・紀伊・北海道)からは82回の打ち上げがありました。そして、能代ロケット実験場はこの4射場に入っていないので、RV-XもRVTも当サイトの153回のどこにも出てきません。「当サイトの集計で見えない1回」の位置づけを、数字で並べます。

上の写真は種子島から上がるH3ロケット(2025年2月)です。RV-Xでも能代でもありません。JAXA研究開発部門はRV-Xを「基幹ロケットの再使用化」の研究と位置づけているため、現行の基幹ロケットを見せる次善の選択です。ISASニュースの表紙にあるRV-Xの合成写真はJAXAの著作物なので、当サイトは使っていません。

宇宙研が10月26日のISASニュースで報告した7月11日の飛行

ISASニュース547号の表紙は、RV-Xの飛行を連続撮影した写真を1枚に合成したもので、キャプションはこう書いています。

2026年7月11日6時14分、能代ロケット実験場にて再使用ロケット実験機RV-Xの飛行試験が実施された。エンジン点火後、RV-X機体は高度約10mまで垂直に上昇。そのまま高度を維持して約15m水平に移動し、エンジンの推力制御により1m/秒で降下して着陸。約40秒間の垂直離着陸飛行に成功した。 (ISASニュース 2026年10月号 No.547 表紙)

4ページの記事「再使用ロケット実験機RV-X・飛行試験を実施!」は宇宙研の野中聡の署名で、RV-Xと宇宙研の関係をこう位置づけています。

RV-Xは研開部門主体の活動ですが、RVTや再使用観測ロケットなど、ISASでの再使用ロケットの研究成果を最大限活用しつつ、将来に向けたロケットの再使用技術を獲得するための実践的な研究であり、ISASも活動の立ち上げから一緒に取り組んできました。 (同 p.4)

当日の様子も同じページにあります。

当日の天候は曇り、風は穏やか。(中略)ほぼ予定通りの6時14分、エンジンに着火して離陸。10mほどゆっくりと上昇し、15m南へ水平移動。その後1m/sの等速で降下して着陸、エンジンカットオフ。40秒ほどの飛行をほぼ計画通りにあっさりと飛んでくれました。 (同 p.4)

姿勢の乱れもほとんどなく、ロールを制御するスラスタはなんと飛行中一度も吹かず。 (同 p.4)

速報値はJAXA研究開発部門のRV-Xページにあります。計画と並べると次のとおりです。

項目結果(速報値)計画
離陸時刻(日本時間)2026年7月11日(土)6時14分55秒—
飛行時間約40秒約40秒
最高到達高度約11m10m程度
水平移動距離約16m15m程度
天候曇り、南東の風1.3m/秒、気温23℃—

同ページは「RV-Xは正常に飛翔し、離着陸を行いました」と書き、その後の「飛行試験シリーズの終了」の告知で、機体点検・設備点検・取得データの詳細評価の結果「所期の成果が得られ」たとしています。この告知には掲載日の記載がありません。 当サイトは告知日を書きません。

飛行から数えると、研究開発部門トップに「RV-X飛行試験ダイジェスト」の動画が載ったのが10月15日で96日後、ISASニュース547号の発行が10月26日で107日後、今日11月2日で114日です。

2003年のRVT-9と並べる: 高度42mから高度11mへ、8,289日

比べる相手は、2003年のRVT(再使用ロケット実験機)第3次離着陸実験です。2003年11月12日のJAXAプレスリリースによると、実験は10月14日から10月31日まで能代多目的実験場(現在の能代ロケット実験場。2003年当時の名称)で行われました。プレスリリースは「予定した3回の離着陸飛行」を行ったと書き、結果の表には飛行時間の記載が無い10月21日の燃焼1回(6秒)も載っています。RV-Xと同じ表に置きます。

機体実施日時(日本時間)最高高度燃焼時間飛行時間備考
RVT-9-12003年10月21日 11時52分—6秒—高度・飛行時間の記載なし
RVT-9-22003年10月25日 9時58分10m20秒17秒
RVT-9-32003年10月27日 8時52分30m21秒18秒
RVT-9-42003年10月31日 14時51分42m20秒17秒
RV-X2026年7月11日 6時14分55秒約11m—約40秒水平約16m移動

RVTの機体はプレスリリースの諸元で「重量:約500kg」「全高:約3.5m」です。RV-Xの機体寸法は今日開いた一次資料には数値がなく、10月15日の記事で文科省部会資料から引いたものを参照してください。ここでは比較しません。

RVT-9-4の2003年10月31日からRV-Xの2026年7月11日までは8,289日です。この間にJAXAの再使用機が飛んでいないことについては、soraeが2026年7月13日の記事で「2003年のRVT-9以来、23年ぶり」と書いています(報道の記述で、JAXAの発言としては確認できていません)。JAXAの一次資料の中で当サイトが確認できたのは、ISASニュースが「RVTや再使用観測ロケットなど、ISASでの再使用ロケットの研究成果を最大限活用」と書いている範囲までで、「以来」は断定せず、報道の記述として扱います。

高度だけを見ると、2003年の42mから2026年の11mへ下がっています。ただし目的が違います。RV-Xページは飛行試験の目的を「再使用可能なロケットの実現に向けて関連する要素技術の検証並びに飛行環境におけるシステムの健全性の検証」と書いており、計画高度は「10m程度」でした。高さを競う試験ではありません。

結成から10年、燃焼166回で飛行は1回

ISASニュース4ページには、RV-Xの来歴が1段落にまとまっています。

2016年にRV-Xのチームを結成して以来、実に10年という月日が流れました。その間、能代ロケット実験場での3シリーズの地上燃焼試験(RV-X-1/2/3)や、相模原キャンパスでの姿勢制御の検証試験、着陸脚を検証する落下試験などを行いました。当初は3、4年で飛ばすという計画でしたが、再使用システム特有の不具合の発生や、水素を使うロケットの離着陸運用に関する安全の議論がありました。 (ISASニュース No.547 p.4)

当サイトで一次資料から確認できた工程は次のとおりです。

時期内容出典
2016年RV-Xチーム結成ISASニュース547 p.4
2018年9月1日〜10月5日第1次地上燃焼試験(RV-X-1-0〜1-5)。燃焼6回、燃焼時間約8秒〜約95秒、定格推力40kN宇宙研トピックス 2018年10月19日
2020年3月〜2021年9月第2次地上燃焼試験(4期に分けて実施)研究開発部門 RV-Xページ
2026年3月チームの保安集合写真(能代)ISASニュース547 p.4 写真キャプション
2026年7月11日飛行試験。1回で「飛行試験シリーズの終了」研究開発部門 RV-Xページ

第3次地上燃焼試験(RV-X-3)の時期は、ISASニュースが「3シリーズ」と書いているものの、今日開いた一次資料に日付が無いので表に入れていません。研究開発部門のRV-Xページは第1次を「2018年夏」、第2次を「2020年3月〜2021年9月」と書いており、第1次の日付は宇宙研トピックスの記載を採りました。

エンジンの燃焼回数には訂正があります。RV-Xページの「訂正のお知らせ」によると、7月11日の試験結果(速報)報告でエンジン通算燃焼回数を「165回」と発言したが、飛行試験での燃焼を含めて「166回」が正しい、とのことです。訂正文にも日付の記載はありません。研究開発部門のビデオライブラリの説明文はこの166回に触れ、冒頭を「将来の再使用型ロケットでは、同じ機体を短期間で繰り返し運用することが求められます。」と始めています。

つまり、結成から10年、エンジンは166回燃やし、機体が飛んだのは1回です。飛行1回で終わることについて、野中氏は4ページの締めでこう書いています。

RV-Xは再使用技術を獲得するための実験です。(中略)「何度も飛ばしてみせることこそが再使用のメリットを示す上でとても重要だ」と私は考えます。我々はこれをISAS輸送系研究の柱であるCRAFTでやってみせます。 (ISASニュース No.547 p.4)

空白8,289日のあいだに国内4射場から82回上がった、能代の飛行は153回に入らない

ここから当サイトの集計です。RVT-9-4の翌日からRV-Xの飛行日までに、国内4射場から何回ロケットが上がったかを、年別の表(日本時間の暦年)から数えました。

年回数成功失敗備考
2003年(11月1日以降)1以上0111月29日 H-IIA 6号機(失敗)。年3回のうち残る1回の日付は未確認
2004年000LL2に登録なし
2005年220
2006年660
2007年220
2008年110
2009年330
2010年220
2011年330
2012年220
2013年330
2014年440
2015年440
2016年440RV-Xチーム結成の年
2017年862MOMO初飛行(7月30日・弾道)を含む
2018年761RV-X第1次地上燃焼試験の年
2019年431
2020年541
2021年550MOMO最終便(7月31日)を含む
2022年101イプシロン6号機
2023年321
2024年752
2025年431
2026年(7月11日まで)2113月5日 カイロス3号機(失敗)・6月12日 H3(成功)
合計(2004年〜2026年7月11日)827111うちMOMO 7回(弾道飛行)を除くと軌道投入便75回

2026年の「7月11日まで2回」は、年別の表の初回が3月5日のカイロス3号機、最終回が10月20日のH3(MMX)で、機体形態別の表からH3-30の初飛行が6月12日、H3-22の最終便が8月11日と分かることから確定しました(いずれも日本時間)。7月11日より前は3月5日と6月12日の2回です。

MOMOの7回(2017年7月30日〜2021年7月31日・弾道飛行)はすべてこの期間の中なので、軌道投入をめざした便だけなら82回から7を引いて75回です。

主数字を2004年以降の82回にした理由は前提のとおりで、2003年の3回のうち中間の1回の日付を当サイトのデータが持っていないからです。11月29日のH-IIA 6号機は空白開始から29日後で確実に入るため、2003年分を含めると「83回、2003年のもう1回が10月31日より後なら84回」になります。

もう1つの区切りとして、RV-Xチームが結成された2016年から飛行までを数えると、2016〜2025年の48回に2026年の2回を足して50回、軌道投入便は43回です。「当初は3、4年で飛ばす」計画だったRV-Xが飛ぶまでに、国内4射場はこれだけ動いています。

そして繰り返しになりますが、RV-Xの7月11日の飛行も、RVT-9の2003年10月の3回の飛行も、この82回にも全体153回にも入っていません。能代ロケット実験場が集計の4射場に含まれないからです。当サイトの2026年の国内打ち上げは4回(成功3・失敗1、10月20日まで)で、7月11日のRV-Xはその外にあります。

次はCRAFTとCALLISTO、どちらも日付は無い

野中氏が「やってみせます」と書いたCRAFTは、ISASニュース2026年1月号(No.538)の同氏の記事によると、「Compact Reusable Air-assist Flight Test rocket」の略で、エアターボとロケットを組み合わせた複合エンジンATRIUMを搭載する小型実験機です。同記事は「機体を1m以下の低高度で浮上させる実験を、能代ロケット実験場で実施する計画」と書いています。時期の記載はありません。

RV-Xページは、RV-XをCALLISTO(1段再使用飛行実験)のフロントローディング研究用の小型実験機と位置づけ、「飛行試験シリーズの終了」の告知でも成果と知見をCALLISTO等に活用するとしています。研究開発部門のCALLISTOページには機体諸元として「胴体直径1.1m、全高13.5m、全備質量3600kg」(着陸時形態)があり、フランス・ドイツの宇宙機関との協力と書かれていますが、飛行実験の場所と時期は書かれていません。

計画中身(一次資料の記載)場所時期
CRAFTATRIUMエンジン搭載の小型実験機。1m以下の低高度で浮上能代ロケット実験場(計画)記載なし
CALLISTO1段再使用飛行実験。胴体直径1.1m・全高13.5m・全備質量3,600kg記載なし記載なし

公式の発信の薄さも書いておきます。JAXAのプレスリリース一覧(2026年)を11月2日に見た範囲で、RV-Xに関する項目は2月27日15時の「小型実験機(RV-X)飛行試験の準備状況に関する記者説明会」の1件だけです。7月と8月にRV-X・再使用ロケット・能代を含む項目はありません。宇宙研のトップページとトピックスの1ページ目(8月6日以降の分)にも、11月2日に見た範囲でRV-X飛行のトピックス記事は見当たりませんでした。7月分のトピックス(2ページ目以降)は確認していません。研究開発部門のビデオライブラリのページでは、ダイジェスト動画のリンクがプレースホルダのままで、動画のURLはトップページのピックアップ側にだけ置かれています。

言えないこと

8,289日の空白のあいだ、国内4射場からは82回上がり、そのすべてが使い捨ての機体でした。能代で約40秒飛んで降りたRV-Xは、その82回にも153回にも入らない1回です。次に当サイトの集計の中に再使用機が現れるとすれば、能代ではなく4射場のどこかから上がる日で、その日付は今日時点でどこにもありません。